シリーズ「現場から、」。日米にフィリピンを加えた初の枠組みでの首脳会談は、南シナ海で高まる中国の脅威を背景に行われました。最前線で何が起きているのか、JNNのカメラが現地に入りました。

先週、フィリピン西部の島を出港した沿岸警備隊。JNNは今回、唯一の日本メディアとして、中国との領有権争いが激化する南シナ海での活動を同行取材しました。

記者
「出港から12時間ほどが経過しました。パラワン島の沖合で漁船と合流しました」

沿岸警備隊の目的は排他的経済水域に「漁礁」を設置し、漁師らを支援することです。

しかし。

記者
「我々の乗っている船のすぐ後方に、中国海警局の船があらわれました」

ここは、中国が軍事拠点化を進める南沙諸島の周辺海域です。夜明けとともに姿を見せた2隻の中国の艦船が、すぐにフィリピンの漁船団を追跡しはじめました。

大型の中国船は漁師たちの目と鼻の先を何度も縫うように航行するなど、危険な行為を繰り返しました。

漁師
「(中国の)大きな船が俺たちのちっぽけな船にぶつかれば一巻の終わりだ」

2016年、オランダの仲裁裁判所は、南シナ海のほぼすべての海域で領有権があるとする中国側の主張を退ける判断を示しましたが、中国側はこれを拒否。

さらに最近はフィリピン軍が実効支配の拠点として1999年、南沙諸島に座礁させた軍艦の撤去を求め、対立が鮮明になっています。

先月23日には軍艦に物資を運んでいたフィリピン船に向け、中国船が放水砲を発射。船内の映像には機材などが破壊される様子や、顔をけがした乗組員の姿が写っていました。

こうした状況について専門家は、中国による「国際秩序への大きな挑戦だ」と指摘します。

フィリピン大学 海洋専門家 バトンバカル教授
「(中国は)南シナ海で何が起こるかは、中国の力によって決められることを示そうとしている。国際社会や国際秩序の崩壊が始まると思います」

こうしたなか、フィリピンのマルコス大統領は岸田総理の訪米に合わせてワシントンに駆けつけ、史上初の3か国首脳会談に臨みました。

フィリピン マルコス大統領
「複雑な課題に対応するには力を合わせることが必要だ」

3首脳は共同声明で、南シナ海などでの中国による威圧的な行動を批判。3か国の海上保安機関や、軍と自衛隊での合同訓練などを通じ、連携を深めることで一致しました。

今後、3か国にとどまらない多国間での結束も強める考えですが、中国の出方も注目されます。

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