防衛相会談に臨む木原稔防衛相(左から3人目)と申源湜国防相(同4人目)=シンガポールで2024年6月1日、中村紬葵撮影

 海上自衛隊と韓国海軍は、日韓レーダー照射問題の再発防止策をまとめた文書の署名手続きを完了した。日本政府関係者が27日明らかにした。海上幕僚監部は署名の事実を認めつつ、いつ署名したかなどについては「相手国との関係があるため答えを控える」としている。6月の日韓防衛相会談で合意した再発防止策を完全実施する環境が整ったことになり、日韓関係の改善が加速しそうだ。

 この文書は再発防止の手順などをまとめた「意図表明文書」で、酒井良海上幕僚長と韓国の梁竜模海軍参謀総長が署名したという。文書には日韓双方が、海上衝突回避の国際規範(CUES)の順守に向けて「相互に協力」すると明記。CUESでは火器管制レーダー照射など「攻撃の模擬」を「回避する動作」として定めている。

 適切な通信を行うため部隊間の呼びかけに積極的に応答することや、通常時から意思疎通を強化して信頼醸成を行うことも盛り込んだ。海自と韓国海軍は今後、署名文書の実施状況を検証し、必要に応じて更なる改善策なども協議する。

 レーダー照射問題は2018年に能登半島沖で発生。海自の哨戒機が韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーを照射され、日韓関係の冷え込みに拍車をかけた。韓国側は照射を全面否定し、逆に哨戒機が危険な低空飛行を行っていたと主張していた。

 その後の日韓雪解けを受け、今年6月に木原稔防衛相と申源湜(シンウォンシク)韓国国防相がシンガポールで会談。レーダー照射問題の事実関係究明は棚上げしつつ、再発防止で合意し、中断していた2国間の部隊のハイレベル交流再開も決めていた。【中村紬葵】

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