zmotions - shutterstock -

<アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンの支配が復活してから約3年、統治の多くの側面が変化している。裁判制度も例外ではない>

欧米に倣った旧政権時代の制度は一掃され、地域レベルではタリバンの裁判官がシャリーア(イスラム法)を解釈して短時間で判決を出すようになった。

通常の裁判に求められる法的手続きは未整備で、刑罰も厳しいが、迅速な審理と膨大な積み残し訴訟の解消によって、一定の評価を得ている。腐敗も前政権よりはましだと見なされている。

政権奪還後の統治の多くの側面とは対照的だ。経済の活性化は失敗。過激派組織「イスラム国」(IS)系グループのテロへの対応も鈍い。政府としての基礎的役割を果たせているとも言い難い。

タリバンが地域レベルの争い事にうまく対処できているのは、さまざまな面でもっと単純な以前の時代に戻ったからだ。

反政府勢力として活動していた10年以上前は、旧政権軍やその同盟軍と戦い、バイクに乗ったイスラム法官のネットワークを駆使して地方にシャリーアを受け入れさせるという比較的単純な仕事に集中できた。

私たちの新しい研究では、米軍の増派が終わったこの時期(2011~14年)に焦点を当て、地方への「イスラム法廷」の導入が戦争にどんな影響を与えたかを調べた。

この期間にイスラム法廷が設置された地区と、ほぼ同条件の他地区を比較すると、前者では暴力を伴う民事上のもめ事(土地をめぐる一族間の争いなど)が急減していた。

その結果、タリバンの統治能力に対する人々の評価が大幅に高まり、旧政権への信頼度は低下したと、米政府が収集した調査で報告されている。

地元でタリバンの裁判を目撃した人々は、自分たちのもめ事を旧政権の裁判所ではなくイスラム法廷に持ち込むと答える割合が有意に高かった。

タリバンの蛮行をよく知っている人々がなぜ、彼らの裁判制度を高く評価するのか。第1に、大半がもめ事の直接の当事者ではなく、自分たちの村や町で起きた争いの巻き添えを食った人々だからだ。彼らはタリバンの判決に同意できなくても、問題が解決されたことに感謝の念を抱いた。

第2に、シャリーアに裏打ちされたイスラム法廷のほうが地元の価値観に合っているからだ。ある訴訟の参加者は言った。「残念ながら、私は裁判で負けたが、タリバンの法官に怒りはない。彼らはシャリーアに従って裁く。シャリーアには逆らえない」

アフガニスタンの人々はもともとタリバンの支配に反対し、過去20年間の政治的変化に賛同していたはずだ。実際、タリバンが最初の権力を握った1990年代は、各地の民兵が執拗に反乱を繰り返した。

イスラム法廷が比較的うまくいっていることが、彼らの権力奪取に対する人々の両義的感情を生み出す契機の1つになったのかもしれない。

米軍の撤退戦略が明確になった20年後半の調査では、回答者の60%以上が平和を支持する一方、タリバンの復権については無関心だった。

つまり、アフガニスタンの人々はタリバンの下での平和に賭けたと解釈することができる。

数十年も暴力と流血が続いた後、イスラム法廷を通じてまともな統治が完全に消滅することはないという証拠を目にした人々は、戦争の継続よりもずっとましな選択として「困難な平和」を受け入れる気になったのだ。

From thediplomat.com

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。