イスラエル軍のハガリ報道官=軍公式ユーチューブチャンネルの動画から

 パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘を巡り、イスラエル軍のハガリ報道官は19日、地元テレビのインタビューで、ネタニヤフ政権が掲げるイスラム組織ハマスの壊滅は「達成不可能だ」として、異例の政府批判を展開した。ガザ最南部ラファでの攻撃を続ける中、軍事作戦の限界を示唆した形だ。ネタニヤフ首相は、軍は政府の決定に従う義務があると反論した。

 ハガリ氏は「ハマスとは『思想』であり、人々の心に根付いているものだ。壊滅できると約束する人は国民を欺いている」と指摘。もし政府がハマスに代わる統治主体を見つけなければ「ガザにハマスは残るだろう」と述べた。人質解放を巡っても、軍事作戦で全員を救助するのは不可能だとして「他の手段を考えるべきだ」と主張した。

 ガザではイスラエル軍が「制圧」したはずの北部などで、ハマスが攻撃を再開するケースが続出している。だが、ネタニヤフ首相はハマス「壊滅」を主張し続ける一方、国内外から求められているガザの戦後統治計画を明確にしていない。ガラント国防相は5月中旬、ガザにはパレスチナ人の行政主体や米欧、アラブ諸国による多国籍軍が必要だと主張。同盟国の米国も、ネタニヤフ氏にガザの戦後計画策定を繰り返し要求している。

 イスラエル軍は19日も、各地で軍事作戦を継続。ロイター通信によると、ラファ西部には戦車が進入した。軍は既にラファの60~70%を制圧し、数週間で全域を制圧する見通しだとしている。軍は同日、ガザ境界に近いイスラエル南部の一部地域で、教育活動や企業活動の制限を解除した。

 一方、パレスチナ通信は、イスラエル軍が「人道地区」と称して住民の避難先に指定している南部マワシ地区を空爆し、少なくとも7人が死亡したと報じた。軍はハマスの一部が人道地区に逃げ込んでいると主張しており、攻撃を強めている可能性がある。【エルサレム松岡大地、カイロ金子淳】

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