米国旗=首都ワシントンで2023年11月14日、西田進一郎撮影

 バイデン米大統領は17日、中国から輸入する鉄鋼・アルミニウムに対する関税を現在の3倍に引き上げる検討をするよう米通商代表部(USTR)に指示する。米政府高官は「中国政府の補助金で過剰生産された低価格の鉄鋼が米市場に流入し、米鉄鋼業界に打撃を与えるのを防ぐ狙い」と説明している。

 相手国に不公正な貿易があると判断した場合に報復措置を科すことができる「通商法301条」に基づく措置。USTRはトランプ前政権が2018年に始めた対中制裁関税の内容の見直しを進めており、この手続きの中で、現在平均7・5%の鉄鋼・アルミの関税引き上げを検討する。

 米政府高官によると、中国の鉄鋼生産の世界シェア(市場占有率)は約50%で、中国政府からの巨額の補助金を支えに米国産に比べ約4割安い価格で輸出している。生産過程で発生する温室効果ガスの量も多く、排ガス抑制投資をしながら生産する米鉄鋼産業が不利な立場に置かれる恐れがあると判断した。

 バイデン政権は、国家安全保障上の懸念がある場合に輸入制限を認める「通商拡大法232条」に基づき、中国からの鉄鋼に25%、アルミに10%の追加関税を課している。トランプ前政権の政策を引き継いだもので、301条に基づく関税引き上げが実施されれば、これに上乗せされる。

 ただ、米政府高官によると、これまでの対中関税の引き上げで中国からの鉄鋼輸入は減っており、現在の輸入量は米国の鉄鋼需要全体のわずか0・6%でしかない。バイデン大統領は11月の大統領選に向け、全米鉄鋼労働組合(USW)の支持を必要としており、中国への関税引き上げで米鉄鋼産業を守るとアピールする狙いがあるとみられる。【ワシントン大久保渉】

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