岸田文雄首相(右)を表敬訪問し、握手するサミュエル・パパロ米インド太平洋軍司令官=首相官邸で2024年5月29日、宮間俊樹撮影

 米インド太平洋軍のパパロ司令官が、10日公開の米紙ワシントン・ポストのインタビューで、中国が台湾に軍事侵攻した場合の初期対応について「多数の機密装備を使い、台湾海峡を無人兵器による地獄絵図にする」と述べた。無人航空機や無人艦艇などの活用が念頭にあるとみられ、「約1カ月は中国側に惨めな状況を強い、我々は他の対応をするための時間を稼げる」と説明した。

 パパロ氏は、同紙のコラムニストであるロギン氏のインタビューで、中国の艦隊が侵攻のために台湾海峡の航行を始めた場合の対応を説明。無人兵器の詳細は明かさなかったが「本物で調達可能だ」と強調した。米国防総省は2023年8月、2年間で数千の自律型兵器システムを配備する計画を公表しており、無人兵器の大量調達を急いでいる。

 一方、パパロ氏は、中国の国防費が公表額の約3倍に上るとの見方も示した。事実なら、年額で約5兆元(約108兆円)に相当し、米国の約9000億ドル(約140兆円)との差は著しく縮まる。中国の国防費には「研究開発費が十分に含まれないなど、不透明だ」との指摘が以前からあった。

 米国は台湾と正式な外交関係はないが、国内法である台湾関係法に基づき、台湾の防衛に必要な武器供与などを行っている。米軍による台湾防衛の意思を意図的にぼかす「あいまい戦略」も取っているが、バイデン大統領は有事には米軍を送って防衛する意思を再三表明。今年5月の米タイム誌のインタビューでも、米軍派遣の可能性について「状況による。米国の軍事力を使うことは排除しない」と述べている。【ワシントン秋山信一】

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