ガザ地区中部で行われたイスラエル軍による人質奪還作戦で、パレスチナ人の市民ら274人が死亡しました。こうしたなか、戦時内閣の一員だった、イスラエルのガンツ前国防相が離脱を表明。比較的穏健派とされるガンツ氏が抜けることで、どのような影響が出るのでしょうか。

■首相は“成果アピール”も…

ガザ地区中部でイスラエル軍が展開した人質奪還作戦。去年10月からハマスにとらわれていた人質の男性3人、そして女性1人を救出しました。拉致されてから8カ月。人質と家族らにとって、あまりに長すぎる時間でした。

救出された人質の父
「優秀で人道的で倫理的な軍に心から感謝します。唯一無二の軍隊です」

人質の解放が進まず、国民から圧力を受けていたネタニヤフ首相にとっては“成果”アピールのチャンスです。

救助された人質
「本当にありがとうございました」
イスラエル ネタニヤフ首相
「本当によかった」
救助された人質
「神様のおかげです」


■ガザ住民ら274人死亡か

人質4人が救出された奪還作戦。それはガザの人々にあまりに大きな犠牲を強いるものでした。

イスラエル軍の人質奪還作戦が始まったのは8日午前11時。空爆は人々が外を行き交う時間帯を襲いました。夜ではなく、ハマスの隙をついた奇襲作戦。人質が拘束されていた建物の模型をもとに事前訓練も行われていたといいます。

男性
「私たちの頭上を20機以上の軍用機が飛んでいた。様子が変だと感じていた。高い建物が攻撃を受けて崩壊した。ビラなどの警告もなかった」

ガザの保健当局によると、パレスチナ人274人が死亡。そのうち64人は子どもです。

男性
「ネタニヤフは家を破壊して210人が死んでも、人質の解放に成功したと信じているのか」

ネタニヤフ首相はこう誇っています。

イスラエル ネタニヤフ首相
「勇敢な兵士たちが戦闘で嵐を起こし、テロリストを排除して人質を解放した。この偉大な成果は、国民と世界中の(イスラエル)支持者の地位を高めた」


■ガンツ前国防相 戦時内閣を“離脱”

一方で、これまで続いていた挙国一致の体制は崩壊しました。

イスラエル戦時内閣 ガンツ前国防相
「ネタニヤフは真の勝利へと進む、痛みを伴う正義を妨げています。従って本日をもって戦時内閣から離脱します」

野党のトップだったガンツ氏ですが、ハマスの襲撃を受けて以降、戦時内閣に参加していました。

ただ、閣内では比較的穏健派とされ、戦闘が長引くとともにネタニヤフ首相との対立が表面化。先月、戦闘終結後のガザ地区の統治計画を策定するよう求めるも、ネタニヤフ首相はこれに応じていませんでした。

ガンツ氏の離脱で、連立政権を組む極右勢力が影響力をさらに強めるのではないかと懸念されています。彼らはガザ地区にユダヤ人入植地をつくり、永久に統治することを主張する勢力です。

イスラエル ネタニヤフ首相
「今後も団結し、全力で人質全員の奪還と、敵に対する勝利を達成する」


■ガンツ前国防相“離脱”の影響は

ガンツ前国防相の離脱でどのような影響が出るのでしょうか。中東情勢に詳しい慶應義塾大学・錦田愛子教授に話を聞きました。

(Q.ガンツ氏はどんな人物ですか)

錦田愛子教授
「現実的な軍事戦略・外交を考えることができる人物。軍事経験が豊富な閣僚として、前線の兵士からも支持を得られる存在」

(Q.政権への影響は)

錦田愛子教授
「ガンツ氏が離脱しても、ネタニヤフ首相は議会の過半数を確保しているので、連立政権は維持できる。ただ、ガンツ氏は野党党首であることから“挙国一致”を示す存在。『超党派の戦時内閣で決めた』という説得力を失うため、意思決定の責任をネタニヤフ首相が一人で負うことになり、対パレスチナ強硬派などからの追及が厳しくなる。政権運営に影響してくる可能性もある」

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