11月に行われる、アメリカの大統領選挙。バイデン氏とトランプ氏が、激しくしのぎを削る中、今聞き慣れない言葉がささやかれ始めています。

トランプ氏TikTok開設

6月1日、TikTokのアカウントを開設したトランプ前大統領が、総合格闘技のイベントを訪れた様子を投稿。すでにフォロワー数は590万人に達しています。

トランプ氏は大統領在任中、中国企業が運営するTikTokの使用を禁止しようとしましたが、今回は一転、大統領選のアピールに使えると思ったのか、活用を始めています。

バイデン氏とトランプ氏の戦いが激しさを増すアメリカ大統領選。

トランプ氏に有罪評決

ニューヨーク市民
「彼(トランプ氏)はわが国だけでなく、民主主義そのものを破壊しようとしている」

トランプ氏への逆風となっているのが、5月、不倫の口止め料を巡り、トランプ氏に有罪の評決が下った裁判。

有罪評決が出た場合、支持者の4%が「支持をやめる」、16%が「改めて考える」といった世論調査結果が出ています。

“ダブルヘイター”

今、そんなアメリカで、大きな広がりを見せている言葉があります。
「ダブルヘイター」、どちらも嫌。

世論調査では、「バイデン氏もトランプ氏もどちらもいい大統領にはならない」と回答した人が29%無党派層に限れば42%。街で聞いても…

バイデンも好きではないし、トランプも好きじゃない。投票には行かない」
「どちらもあまり良い選択肢とは言えない
「多くの人が何か新しくて違うものを望んでいると思う」

バイデン氏にも懸念材料

実際、再選を目指すバイデン氏にも大きな問題が…

5月、ハーバード大学は、イスラエルのガザ攻撃に反対しキャンパス内でデモを行った学生13人の卒業を認めないと発表。これに対し、数百人の学生が、卒業式から抗議の退出をしました。

いまや多くの若者から、バイデン政権への批判の声が上がっており、前回の大統領選で、当選の要因となった若者層の一部が離れつつあるとの指摘もあります。

ニューヨーク大学 ロバート・コーエン教授
「2020年にバイデン氏がトランプ氏を破ったのは主な支持層の一つが若者だったから、影響はある」

第3の候補

さらにこのダブルヘイタ―とも、つながる動きが出てきています。現在、大統領選に名乗りを上げ、注目を集めているのが、民主党でも共和党でもない、無所属から出馬したケネディ元大統領の甥、ロバート・ケネディ・ジュニア氏

ロバート・ケネディ・ジュニア氏
「トランプ前大統領もバイデン大統領も問題に対処できる能力がない」

抜群の知名度もあり、支持率は10%前後で推移。今後、ケネディ氏が選挙戦の波乱材料になるかも、といった声も上がっています。

ケネディ氏の集会参加者
「バイデン氏もトランプ氏も嫌なので、別の候補者を探している」

ダブルヘイターがもたらす懸念…

「ダブルヘイター」が広がる状況を、アメリカ政治に詳しい渡辺教授は

渡辺靖・慶応大学教授(現代アメリカ論)
「結局はどちらの候補がより良いかということではなくて、より悪くないか、という消去法の選択になるかと思う。あるいはもう投票しない、棄権するというオプション(選択肢)もある

「ダブルヘイタ―」が大統領選に影を落とす中、さらに今…

イリノイ州出身30代男性
「若い世代はいらだっているんだ。民主主義が機能していないと思われても仕方がないよ」

バイデン氏、トランプ氏、「どちらも嫌」というダブルヘイタ―の増加。こうした状況は、アメリカの民主主義そのものへの不信にまで広がっています。

民主主義に懐疑的な風潮

実際、2024年1月発表の世論調査では、アメリカにおける民主主義のあり方に満足する人の割合が、2021年1月のアメリカ議会襲撃事件直後の35%を下回る、過去最低の28%

渡辺教授は、若者を中心に民主主義に懐疑的な風潮があるといいます

渡辺靖・慶応大学教授(現代アメリカ論)
「最近の若い世代は東西冷戦を知らないので、必ずしも民主主義にこだわりというか、確信を持っていない。特に最近のアメリカでは党派対立が非常にひどくなって、どうも、この民主主義というのは、結局決まらない政治そのもの、そういう声も若い世代には聞かれるわけです」

日本にいるアメリカの若者に、都内で聞いてみると…

ハワイ州出身20代男性
(民主主義は)機能していないと思う。特権階級にいる人たちは私たち一般市民の声を聞かず理解もしていない」
カリフォルニア州出身20代女性
「2党の対立が国を分断している。中立派は困って投票先を失っている機能不全な社会とシステムになっていると感じる」
イリノイ州出身30代男性
「若い世代は、国民の代表である政治家が、僕らを代表していないと感じている。若い世代はいらだってるんだ。民主主義が機能していないと思われても仕方がない」

「ダブルヘイター」が浮き彫りにする、民主主義の混迷。それをどう捉えたらいいのでしょうか…

(「サンデーモーニング」2024年6月9日放送より)

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