ユーロ圏の金融政策を担う欧州中央銀行(ECB)=独西部フランクフルトで2017年10月27日午前、三沢耕平撮影

 欧州中央銀行(ECB)は6日、定例理事会を開き、主要政策金利を引き下げることを決めた。ECBの利下げは2019年9月以来、約4年9カ月ぶり。欧州では高水準の物価上昇(インフレ)が収束しつつある一方で、景気停滞の懸念が強まっている。利下げによって経済の下支えに政策の軸足を移す。

 ECB同様、インフレ対応で金融引き締めを優先してきた米連邦準備制度理事会(FRB)に先行して金融政策の転換に踏み切った。利下げにより日本との金利差が縮小するため、歴史的な水準となっていた対ユーロの円安傾向に歯止めがかかる可能性がある。

 ECBは民間銀行が資金を借り入れる際の主要政策金利を0・25ポイント引き下げ、4・25%とする。民間銀行が資金を預ける際の中銀預金金利も従来より0・25ポイント低い3・75%となる。

 欧州連合(EU)統計局によると、ユーロ圏20カ国の5月の消費者物価指数上昇率は前年同月比2・6%。変動の大きいエネルギーや食料品などを除いた上昇率も2・9%だった。ECBが物価目標に掲げる2%は上回っているものの3月以来、連続して3%を下回り、下落傾向が鮮明となっている。

 ユーロ圏の24年1~3月期の国内総生産(GDP)成長率は0・3%。マイナス圏からは抜け出したものの依然、力強さに欠けており、ECBは物価抑制よりも、景気刺激を優先すべきだと判断した。

 ただ、ユーロ圏の4月失業率は過去最低水準の6・4%。賃金動向の影響を受けやすいサービス部門のインフレ率は5月時点で4・1%と高水準が続いている。人手不足が続く中、賃金上昇などがインフレの再加速につながる懸念がくすぶっており、市場では「今後の追加利下げのペースは緩やかなものになる」との見方が強い。

 ユーロ圏では、新型コロナウイルス感染拡大後の経済再開と、ロシアによるウクライナ侵攻後の資源高に伴い、22年10月の物価上昇率が10・6%に達した。ECBはインフレを抑えるため、急ピッチで政策金利を引き上げていた。【ブリュッセル岡大介】

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