国連のグテレス事務総長=ニューヨークで2023年5月16日、八田浩輔撮影

 国連のグテレス事務総長は5日、深刻化する気候変動への対応の一環として、化石燃料産業の広告を規制するよう加盟国に求めた。報道機関やIT企業に対しても、化石燃料に関する広告を掲載しないよう呼びかけた。「世界環境デー」に合わせた米ニューヨーク市での演説で語った。

 グテレス氏は、「化石燃料業界の多くは、気候変動対策を遅らせるロビー活動をする一方で、恥知らずにも(環境に配慮していると見せかける)グリーンウォッシングを行ってきた」と指摘。「(化石燃料業界は)広告会社やPR会社に支援され、けしかけられて狂気をあおってきた」とも述べ、広告をめぐる構造的な問題への批判を展開した。そのうえで、多くの国が健康に害を与えるタバコの広告を規制していることに触れ「惑星の破壊を助長する」として、加盟国に化石燃料の広告規制に踏み切るよう促した。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える目標を掲げる。しかし、国連の世界気象機関(WMO)は最新の予測で、2028年までの5年平均で1・5度を超過する可能性を47%と試算している。

 グテレス氏は、温暖化に伴う自然災害の増加がサプライチェーンの寸断や物価上昇、食料不安を深刻化させていることなどにも触れ、「1・5度は目標ではない。物理的な限界だ」と指摘。「1・5度への戦いは2020年代に勝敗が決する。すべては指導者たちが下す決断にかかっている」と訴え、主要7カ国(G7)と経済協力開発機構の加盟国は2030年までに石炭火力を廃止すべきだと主張した。【ニューヨーク八田浩輔】

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