北朝鮮で撮影されたという映像。
暗い部屋の中で、市民が一心不乱に紙幣を数える様子が映っている。

映像の中で北朝鮮市民は「お前が送った20万円(=9180元)をもらった。感謝するよ」と話していて、別の市民は「夢のようだ、本当に。言葉が出ないよ…」と、涙をこらえきれない様子。

核・ミサイルなどの開発を進める一方で、貧困にあえぎ続ける北朝鮮の一般市民。
そうした人々の頼みの綱となっているのが、北朝鮮外からの送金だ。

FNNは、これを請け負うブローカーを、日本メディアとして初めて取材した。

「わたしは2010年に韓国に来たので、13~14年前の事です」と話すのは、“送金ブローカー”のチュ・スヨンさん。

夫や子どもと韓国・ソウル近郊で暮らす脱北者で、韓国側の送金ブローカーの1人だ。

ブローカーは、送金を希望する人から金を受け取ると、まずソウル市内の“両替所”と呼ばれる場所に預ける。

その後、ソウルの両替所から中国の両替所に送金。
その金はさらに複数のブローカーを介して北朝鮮に入り、ようやく送り先へと渡る。

撮影された映像は“送金完了の証し”としての意味も。

しかし、市民が実際に手にする額は最初の送金額の6割程度で、残りの約4割はブローカーへの手数料とされている。

「日本円で20万円余りの外貨を手にすれば、北朝鮮では1年暮らしていける」と話す、ブローカーのチュさん。
「北朝鮮は配給制だがすでに名ばかりのもので、市民は“闇市”のような場所で食べるものを確保し生きていくしかない。海外の送金は砂漠のアオシスのようなお金」なのだという。

チュさんのような送金ブローカーは、実は、韓国では非合法な存在。
それなのになぜ今回、顔や名前を公表し取材に応じたのか。

きっかけは、これまで黙認されてきた送金ブローカーが警察の捜査対象になったこと。

北朝鮮に強硬姿勢をとる韓国の尹(ユン)政権下で、ブローカーの取り締まりが強化されたという。

チュさんは「わたしをスパイとして捜査しようとしたんですよ。それがあまりにも悔しくて…。合法的にお金を送れるルートが他にあるのならこんなことはしません」と話した。

北に残る家族たちを助けたいだけなのに、時の政府に翻弄(ほんろう)されている。
抗議の意味も込めて、顔出しでの取材に応じた。

一方で、北朝鮮事情に詳しい専門家は、こうした非合法な送金が、結果として金正恩(キム・ジョンウン)ファミリーを潤す一因となると指摘。

甲南女子大学の鴨下ひろみ准教授は「脱北者が家族に向けて送金したお金が取り締まりを受けて、没収されて金正恩政権に入る。そういうことは十分あり得る」と話した。

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