SNSで募集していた肥満の人のためのエベレスト登山ツアーでエベレストのベースキャンプのそばまで来たマッケイ(2004年3月) KATIE MCCAY

<登山ギアの発達や数時間先の天気までわかる技術進化の助けもあって、エベレストは到達しがたい神の山から誰もが目指す普通の山になった。過密による環境の荒廃は言うまでもなく問題だが、肥満体でもベースキャンプにたどり着き、夢にまで見たエベレストを仰ぎ見たケイティ・マッケイの感動を誰が否定できるのか>

ケイティ・マッケイの夢は、エベレスト登山の基地となるベースキャンプまで上ることだった。「子供の頃からエベレストに夢中だった」と、マッケイは本誌に語った。

熱心な登山愛好家のマッケイは、TikTokで山歩きの旅を記録している。肥満や足の遅い登山家向けの登山グループが今年3月のエベレスト登頂を計画していることを聞き、マッケイは友人と一緒に、世界最高峰を訪れる機会に飛びついた。

 

この春のシーズン、マッケイが参加した登山隊をはじめ、初心者から熟練者まで何千人もの登山者がエベレストのベースキャンプやその周辺をトレッキングした。

ケイティ・マッケイの夢は、エベレスト登山の基地となるベースキャンプまで上ることだった。「子供の頃からエベレストに夢中だった」と、マッケイは本誌に語った。

熱心な登山愛好家のマッケイは、TikTokで山歩きの旅を記録している。肥満体と足の遅い登山家向けの登山グループが今年3月のエベレスト登頂を計画していることを聞き、マッケイは友人と一緒に、世界最高峰を訪れる機会に飛びついた。

【動画】渋谷か京都並みに過密なエベレスト

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この春のシーズン、マッケイが参加した登山隊をはじめ、初心者から熟練者まで何千人もの登山者がエベレストのベースキャンプやその周辺をトレッキングした。

近年、エベレストに関しては、山頂まで続く登山者の長い行列や、ゴミだらけのベースキャンプを映した動画や画像がソーシャルメディア上に出回っている。しかしマッケイによれば、そうした動画は、エベレストに登るということが(たとえ頂上に到達しなくても)どういうことなのか、その全貌を伝えていないと言う。

ネパール観光局によれば、今年すでに600人以上の登山者が標高8849メートルの山頂に到達している。

アメリカ人有名登山家アラン・アーネットによれば、ネパール側から登山する外国人登山家は、900人のシェルパ(山岳ガイド)の支援を受けていた。最近再開されたチベット側登山口には、さらに100人の外国人登山者と100人のガイドがいた。

 

登頂の成功率が急上昇

調査会社スタティスタのデータによると、エベレスト登頂成功者の数は急増しており、過去10年間で毎年平均414人が登頂に成功している。標高約5364メートルのベースキャンプなら、年間約4万人が到達している。

成功率の急上昇にはいくつかの要因があるが、そのうちのひとつはごく単純だ。70年以上前ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリーが初めてエベレストを制覇したときと比べて、昨今は登頂に必要な肉体的条件がいくらか軽減されている。登山靴や登山服、その他の道具も改良を重ねて負担を軽減するように作られている。

「エベレストはどのシーズンだろうと、人気があると思う。エベレスト登山のロジスティクスの合理化が進むにつれて、すべてがより効率的になった。率直に言って、登頂は10年前よりも挑戦しやすくなっている」と登山専門会社マウンテン・プロフェッショナルズのオーナー、ライアン・ウォーターズは本誌に語った。

それでも、エベレスト登山には危険が伴う。今シーズンは登山者8人が死亡し、3人が行方不明になっている。

一方、ネパール人登山家のプンジョ・ラマは14時間31分で登頂し、女性最速の記録を達成した。また、シェルパ族の山岳ガイド、カミ・リタは30回目の登頂に成功し、自身がもつ最多登頂記録を更新した。

「ベースキャンプに到達することは、それ自体が独立したトレッキングだ」という認識が、ソーシャルメディアを通じて広がっている、とマッケイは言う。「エベレストに登頂する必要はない。エベレストを見ることができるだけで、この上なくスリリングな体験だ」

冒険を求める人々がヒマラヤに大挙して押し寄せるなか、ネパールの最高裁判所は、過密状態を緩和するために配布される登山許可の数を制限するよう政府に求めている。登山許可証の取得費用も来年から1万1000ドルから1万5000ドルになる見込みだ。

ニュージーランドの山岳ガイド会社アドベンチャーズ・コンサルタンツのゼネラル・マネージャー、キャロライン・オグルは、注目度の高いドキュメンタリー映画が作られていることも、エベレストが脚光を浴びる原因となっている、と語った。

 

ウォーターズは、2023年もエベレスト登頂許可者数が記録的に増えた年だったと指摘。彼自身はこの春は登らなかったが、「過去10年間、ほぼ毎年」登っており、エベレスト初登頂から21年目となる来年の春も再登頂をめざす予定だという。

チベットルート再開の影響

「エベレストの登山者は年々増えている」と、アルパイン・アセンツ社でプログラム・ディレクターを務めるゴードン・ジャノーは言う。「知名度がさらにあがっている。エベレストに魅力を感じる人々は常に存在する」

ジャノーは、趣味でランニングを始めた人が、やがて5キロのレースに出たいと思うようになり、やがてはマラソン大会に出たいと思うようになる例をあげた。

「それはごく自然な成り行きだ」と、ジャノーは言う。彼が経営するアルパイン・アセンツ社は、90年代にいち早くエベレスト登山ツアーを企画した会社のひとつだ。

それ以来、地元ネパールの会社がエベレスト登頂のガイドをするようになり、登山を希望する人々の選択肢が増えた、とジャノーは言う。その前は、ヨーロッパ、アメリカ、ニュージーランドを拠点とする会社を通して登山するのが一般的だった。

混雑に拍車をかけているのは、チベット側からの登山の再開だ。新型コロナウイルスのパンデミック発生で4年間登山を禁止していた中国は今年、外国人にチベット経由での登山を許可した。

「インド亜大陸や中国など、世界各地から多くの人々がやってくるようになった。彼らが登山の訓練を受けているとは限らない」と、ジャノーは言う。「ただ登山の世界に飛び込み、手あたり次第登ることができる山に登って、多少のスキルを身に着けた程度の人々だ」

そのため、登山経験の浅い登山客を受け入れるツアー会社が増え、登頂のスピードが遅くなっている、とジャノーは言う。

マッケイは登山に先立ち、バージニア州のアパラチア山脈でハイキングし、5キロマラソンを走り、足踏み運動用のステッパーで鍛えるなど、「できる限りのトレーニング」を試みた。

「それが私の日課の大半だった」と、彼女は言う。「正直なところ、エレベスト登山のコースは予想とは違っていた。たいへんだったけれど、なんとかなった」。

おそらく最も重要なのは、リアルタイムの山の気象トラッキングシステムの登場だ。おかげで、登山者は、山を登り続けるのに適した天候がいつになるかをほぼ正確に予測できるようになった。

 

「以前は、山に登ってから好天を祈るしかなかった」と、彼は言う。「今は衛星が2、3時間先まで天気を教えてくれる。それで事態が一変した」

山頂に向かう登山者の渋滞が発生するのは、好天を予測できるシステムのせいだ。ソーシャルメディア上では「ラッシュアワー」状態の登山者たちを映した数々の画像や動画が注目を集めている。

「エベレストの頂上をめざして押し寄せた登山者が大行列を作る画像があるが、あんなことになるのは、複数の大規模な登山隊が同じ日に登頂することを選択するからだ」と、アドベンチャー・コンサルタンツのオグルは本誌に語った。

This is a Mt Everest base camp. Overflowing with people, tents, garbage and human waste. Another natural wonder ruined. pic.twitter.com/FO3xUvMqTs

— Sarah Connor (@collapse2050) May 24, 2024

近年、エベレストに関しては、山頂まで続く登山者の長い行列や、ゴミだらけのベースキャンプを映した動画や画像がソーシャルメディア上に出回っている。しかしマッケイによれば、そうした動画は、エベレストに登るということが(たとえ頂上に到達しなくても)どういうことなのか、その全貌を伝えていないと言う。

ネパール観光局によれば、今年すでに600人以上の登山者が標高8849メートルの山頂に到達している。

アメリカ人有名登山家アラン・アーネットによれば、ネパール側から登山する外国人登山家を支援するシェルパ(山岳ガイド)は900人に上る。最近再開されたチベット側登山口には、さらに100人の外国人登山者と100人のガイドがいた。

登頂の成功率が急上昇

調査会社スタティスタのデータによると、エベレスト登頂成功者の数は急増しており、過去10年間で毎年平均414人が登頂に成功している。標高約5364メートルのベースキャンプなら、年間約4万人が到達している。

成功率の急上昇にはいくつかの要因があるが、そのうちのひとつはごく単純だ。70年以上前ニュージーランドの登山家エドモンド・ヒラリーが初めてエベレストを制覇したときと比べて、昨今は登頂に必要な肉体的条件がいくらか軽減されている。登山靴や登山服、その他の道具も改良を重ねて負担を軽減するように作られている。

「エベレストはどのシーズンだろうと、人気があると思う。エベレスト登山のロジスティクスの合理化が進むにつれて、すべてがより効率的になった。率直に言って、登頂は10年前よりも挑戦しやすくなっている」と登山専門会社マウンテン・プロフェッショナルズのオーナー、ライアン・ウォーターズは本誌に語った。

それでも、エベレスト登山には危険が伴う。今シーズンは登山者8人が死亡し、3人が行方不明になっている。

一方、ネパール人登山家のプンジョ・ラマは14時間31分で登頂し、女性最速の記録を達成した。また、シェルパ族の山岳ガイド、カミ・リタは30回目の登頂に成功し、自身がもつ最多登頂記録を更新した。

「ベースキャンプに到達することは、それ自体が独立したトレッキングだ」という認識が、ソーシャルメディアを通じて広がっている、とマッケイは言う。「エベレストに登頂する必要はない。エベレストを見ることができるだけで、この上なくスリリングな体験だ」

冒険を求める人々がヒマラヤに大挙して押し寄せるなか、ネパールの最高裁判所は、過密状態を緩和するために配布される登山許可の数を制限するよう政府に求めている。登山許可証の取得費用も来年から1万1000ドルから1万5000ドルになる見込みだ。

ニュージーランドの山岳ガイド会社アドベンチャーズ・コンサルタンツのゼネラル・マネージャー、キャロライン・オグルは、注目度の高いドキュメンタリー映画が作られていることも、エベレストが脚光を浴びる原因となっている、と語った。

ウォーターズは、2023年もエベレスト登頂許可者数が記録的に増えた年だったと指摘。彼自身はこの春は登らなかったが、「過去10年間、ほぼ毎年」登っており、エベレスト初登頂から21年目となる来年の春も再登頂をめざす予定だという。

チベットルート再開の影響

「エベレストの登山者は年々増えている」と、アルパイン・アセンツ社でプログラム・ディレクターを務めるゴードン・ジャノーは言う。「知名度がさらにあがっている。エベレストに魅力を感じる人々は常に存在する」

ジャノーは、趣味でランニングを始めた人が、やがて5キロのレースに出たいと思うようになり、やがてはマラソン大会に出たいと思うようになる例をあげた。

「それはごく自然な成り行きだ」と、ジャノーは言う。彼が経営するアルパイン・アセンツ社は、90年代にいち早くエベレスト登山ツアーを企画した会社のひとつだ。

それ以来、地元ネパールの会社がエベレスト登頂のガイドをするようになり、登山を希望する人々の選択肢が増えた、とジャノーは言う。その前は、ヨーロッパ、アメリカ、ニュージーランドを拠点とする会社を通して登山するのが一般的だった。

混雑に拍車をかけているのは、チベット側からの登山の再開だ。新型コロナウイルスのパンデミック発生で4年間登山を禁止していた中国は今年、外国人にチベット経由での登山を許可した。

「インド亜大陸や中国など、世界各地から多くの人々がやってくるようになった。彼らが登山の訓練を受けているとは限らない」と、ジャノーは言う。「ただ登山の世界に飛び込み、手あたり次第登ることができる山に登って、多少のスキルを身に着けた程度の人々だ」

そのため、登山経験の浅い登山客を受け入れるツアー会社が増え、登頂のスピードが遅くなっている、とジャノーは言う。

マッケイは登山に先立ち、バージニア州のアパラチア山脈でハイキングし、5キロマラソンを走り、足踏み運動用のステッパーで鍛えるなど、「できる限りのトレーニング」を試みた。

「それが私の日課の大半だった」と、彼女は言う。「正直なところ、エレベスト登山のコースは予想とは違っていた。たいへんだったけれど、なんとかなった」。

おそらく最も重要なのは、リアルタイムの山の気象トラッキングシステムの登場だ。おかげで、登山者は、山を登り続けるのに適した天候がいつになるかをほぼ正確に予測できるようになった。

「以前は、山に登ってから好天を祈るしかなかった」と、彼は言う。「今は衛星が2、3時間先まで天気を教えてくれる。それで事態が一変した」

山頂に向かう登山者の渋滞が発生するのは、好天を予測できるシステムのせいだ。ソーシャルメディア上では「ラッシュアワー」状態の登山者たちを映した数々の画像や動画が注目を集めている。

「エベレストの頂上をめざして押し寄せた登山者が大行列を作る画像があるが、あんなことになるのは、複数の大規模な登山隊が同じ日に登頂することを選択するからだ」と、アドベンチャー・コンサルタンツのオグルは本誌に語った。


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