1939年に貸し出され、2024年に返却された本=ヘルシンキ中央図書館のフェイスブックより

 フィンランドの首都ヘルシンキの図書館で、貸し出されていた本が約85年ぶりに返却された。フィンランド放送協会(YLE)などが伝えた。

 ヘルシンキ市の「中央図書館」に5月27日に返却されたのは、名探偵シャーロック・ホームズの作者アーサー・コナン・ドイルの「亡命者」(1893年)。歴史小説で、ホームズ物語ではない。

 貸出期限は「1939年12月26日」で、返却した人と借りた人の関係については図書館員も聞かなかったが、図書館の担当者は「亡くなった家族らの遺品整理中に見つかるケースが多い」と説明している。

 同図書館では本の返却の延滞に対する罰金は最大6ユーロ(約1000円)だが、この本は古すぎて現在の図書館のシステムに登録されていなかったため、罰金は科されないという。

 返却が遅れた理由として、39年11月に当時のソ連(ロシア)がフィンランドに侵攻を開始したことから、担当者は「戦争が始まり、本の返却どころではなくなった可能性がある」と述べている。

 この本は20年代の刊行だが、保存状態が良いため再び貸し出すことも検討しているという。【ロンドン篠田航一】

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