シンガポールで中国の董軍国防相(右)と握手する木原稔防衛相=防衛省提供

 シンガポールを訪問している木原稔防衛相は1日、中国の董軍国防相と約50分間、会談した。木原氏はロシア軍との連携を含む中国軍による日本周辺での軍事活動の活発化や、南シナ海への海洋進出に「深刻な懸念」を伝達。中国軍が5月に台湾を取り囲む形で軍事演習をしたことを念頭に、台湾海峡の平和と安定の重要性を指摘した。

 一方、両氏は日中首脳間で戦略的互恵関係の包括的な推進を確認していることを踏まえ、防衛当局間でも意思疎通を継続する方針で一致。2023年5月に運用が始まった日中防衛当局幹部間を直結するホットライン(専用回線)を、今後も適切に運用し、対話や交流を推進していくことも確認した。

 日中防衛相の会談は23年6月以来、1年ぶりで、木原氏と董氏の会談は初めて。

 会談冒頭で、木原氏は「日中間には安全保障上、多くの懸念が存在する。懸念があるからこそ、防衛当局間で率直な議論を重ねることが重要だ」と述べた。董氏は「防衛当局は努力を尽くし、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないという政治的コンセンサスを具体的な政策と行動に移すべきだ」と語った。日本側を批判する発言はなかった。

 また木原氏は会談で、北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルなどの発射を強く批判。地域が不安定化することへの懸念も董氏に伝えた。【シンガポール中村紬葵】

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