同性婚を認めると異性カップルの離婚が増えるという反対論もあったが GORODENKOFF/ISTOCK
<同性婚の合法化後、婚姻率は全体的に上昇し、養子縁組も増加した。最新調査で分かった同性婚合法化による好影響の数々>
同性婚は結婚という制度にダメージを与えるのか。「結婚の平等」反対派の懸念とは裏腹に、同性婚を合法化しても異性間の婚姻に悪影響はないことが明らかになった。
米シンクタンク、ランド研究所とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)は5月中旬、新たな研究報告書を発表。同性婚の法制化は異性カップルの婚姻率や離婚率に影響を与えないばかりか、全体的な婚姻率の上昇につながっているという。
好影響はまだある。LGBTQ+(全ての性的少数者)の身体的健康の向上やヘイトクライムの減少、婚姻カップルによる養子縁組率の上昇だ。
「同性カップルの結婚の権利を認めれば、結婚制度が弱体化し、婚姻件数の減少や離婚件数の増加、家族形成の回避を招くと、反対派は予想していた」。報告書の共著者であり、UCLA社会心理学教授でランド研究所非常勤研究員のベンジャミン・カーニーは声明でそう指摘する。「全般的に見ると、そうした懸念は現実になっていない」
15年の最高裁判決によりアメリカ全州で同性婚が認められた
かつてのアメリカでは、同性カップルの婚姻の法的位置付けは州によって大きく異なっていた。2004年5月、全米で初めて合法化したのはマサチューセッツ州だ。同性婚の禁止は同州憲法に違反するという州最高裁判所の判決を受けてのことだった。
その後の約10年間、裁判所の判断や合法化運動、あるいは住民投票を経て、さらに数州が同性婚を法制化。15年6月には米連邦最高裁判所の合憲判決により、全州で同性婚が認められることになった。
UCLAとランド研究所は、同性婚の影響を調べた研究100件近くを分析。合法化後の州レベルの婚姻率に、同性婚の容認だけでは説明できない規模の上昇が見られることが判明した。異性間の婚姻は1~2%増加。同性・異性を問わないカップル全体では、約10%増えていた。
性感染症の罹患率低下、差別の減少も
「結婚離れを示す証拠は存在しない」と、報告書の共著者で、ランド研究所の経済学者メラニー・ゼイバーは声明で述べている。「むしろ、結婚への関心が高まった。これは同性カップルだけでなく、より幅広い層に当てはまる」
反対派の主張と異なり、異性間の婚姻率の減少も離婚率の上昇も認められなかった。
さらに、報告書によれば、同性婚合法州では梅毒やHIV・エイズの罹患率が低下していた。同性婚世帯は持ち家率や所得水準がより高く、養子縁組件数もより多い。性的指向を理由とするヘイトクライムやLGBTQ+の人に対する雇用差別が減少していることも分かった。
「確認できる変化はどれも、より幅広い層で婚姻が再び重要視されていることを示している」と、ゼイバーは指摘する。「同性婚を認めれば、異性カップルや家族に悪影響が及ぶという懸念には経験的証拠が存在しない」
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