イランによる報復攻撃を受けたイスラエル。ネタニヤフ首相率いる「戦時内閣」は、イランに反撃を行うことで一致していると報じられましたが、これからどう動くのでしょうか。

イスラエル「反撃で一致」報道 右派から“過激な声”も

増尾聡記者:
イラン側が今回の攻撃について、一旦終了したことを明かしたことで、テルアビブ市内では日常生活が戻っているものの、市民からは今後の行方について懸念する声が聞こえています。

イスラエル戦時内閣は14日会合で、イランに対して「反撃する」という点では一致したとの報道があり、次の最大の焦点は「どの程度の規模になるのか」になります。

イランの報復攻撃については、イランが攻撃の前後でスイスの仲介者を通じてアメリカとやり取りするなど、いわば調整され、抑制的なものだったという見方が強くあります。

一方、今後のイスラエルの対応が同様になるかと問われれば、そうとは言い切れません。ネタニヤフ政権を支える右派閣僚からは、すでに「最大限の力で反撃するべきだ」などといった過激な声が出ているからです。

また、そもそもの発端となったシリアのイラン大使館への攻撃も、最大の支援国であるアメリカに事前に通知しないという異例の形で強行されたとワシントン・ポストが伝えています。

今回もバイデン大統領は、これ以上事態をエスカレートさせないように求めているといいますが、その声にどこまで耳を傾けるか疑問が残ります。

これまでのガザへの対応をみても、ネタニヤフ首相はアメリカや国際社会からの自制を求める声を無視してきた経緯もあり、今回、強硬策に打って出る可能性も十分に考えられます。

そうなった場合、イランと攻撃の応酬となり、より広い範囲での戦闘に発展するという、最悪のシナリオも考えられ、予断を許さない状況が続いています。

イスラエル ガザの現状から目をそらすため? 中東で何が?

井上貴博キャスター:
イスラエルとイランは、1979年のイラン革命勃発以降、45年近く敵対しています。そのような状況の中、イラン革命防衛隊によると、4月1日にイスラエル側がイラン大使館を攻撃し、司令官らが死亡しました。

イスラエル軍によると、これを受けて、イランは13日に弾道ミサイルなど300以上を発射し、報復攻撃をしたといいます。

【イスラエル 初めてイラン大使館を攻撃】
攻撃の意図:国内情勢が厳しい
・ガザなどの問題が長引いている
・アメリカの後ろ盾がない。
→敵の脅威を煽り、国内で団結する狙い

【イラン 弾道ミサイルなど300以上】
報復の意図:国内情勢が厳しいなか、外交官が亡くなった
→何もしないのは国内を統制できないと見られるため“報復”

イランは「これでやめる」ということですが、イスラエルは振り上げた拳をどう納めるのでしょうか。

須賀川拓記者:
イスラエルは、今もガザ地区に残る人質を救出することができず、政権に対する不満が高まっています。そこから批判の矛先を変えたいという意図があります。

イランは、国内の経済状況が非常に悪化しています。何より大使館を攻撃されていますので、報復攻撃をしないとメンツが保てないわけです。

今の状況は、やや不謹慎ですが、野球に例えると1対1、表と裏の攻撃が終わった状態です。そして今、ボールはイスラエル側にあります。さらなる報復攻撃は、ほぼ既定路線だと言われていますので、今後どうなってしまうのか懸念されます。

“キー”となるネタニヤフ首相は、どう動くか予想がつかない人なのです。

アメリカのバイデン大統領は、13日の電話会談でさらなる「軍事作戦への参加や支援はない」と言いましたが、果たしてそれが、歯止めになるのかがわからず、一番の懸念材料となっています。

ホラン千秋キャスター:
現地では「これより大きな争いにならないか不安だ」という声もあります。国際社会的にも心配ですよね。

ハロルド・ジョージ・メイさん:
イランの人々はこれ以上、戦いが広がることは望んではいないと思います。イスラエルの人々もガザ地区で大変な状況なので、それどころではないのではないでしょうか。お互い、戦いたくないというのが本音だと思います。

ホランキャスター:
今後はどのようになるのでしょうか。

須賀川記者:
ボタンのかけ違いが一番怖いです。現在1対1、表と裏の攻撃が終わりましたが、仮に今後2回、3回、4回と戦いが続き、もし弾道ミサイルで市民に大きな被害が出てしまったら、やられた側はもうやり返すしかなくなって、一気にエスカレーションしてしまう。これが最大の懸念材料ですね。

もう一つ大事な部分は、ガザで今起きていることでもあります。イスラエルとイランの対立が表面化しているのは、ガザの現状から目をそらすという思惑もおそらくあると思います。

この問題について報じることは大事ですが、ガザが今後どのようになるのかということにも、きちんと目を向けていかなくてはいけません。

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