インサイデー取引で摘発されたボウスキー。ヘリで通勤し、睡眠3時間で稼ぎまくる生活は終わった¥Bad Money-YouTube
<金で金を生むことに誰もが血道を上げた1980年代のウォール街で、最も稼いだトレーダーにまで上り詰め、インサイダー取引ですべてを失ったアイバン・ボウスキの教訓>
かつてウォール街の大物として名声を極め、証券詐欺で有罪判決を受け、映画『ウォール街』の主人公ゴードン・ゲッコーのモデルになったアイバン・ボウスキーが5月20日、カリフォルニア州の自宅で死去したことを家族が確認した。享年87歳だった。
活況を呈していた1980年代のウォール街において、ボウスキーは、最も裕福で影響力のあるリスクテイカーの一人とみられていた。義母の遺産70万ドルを元手に裁定取引専門会社を立ち上げて大成功を収めたが、1986年にインサイダー取引で摘発され、キャリアは崩壊した。
この事件で彼は実刑判決を受けて刑務所に入り、1億ドルという当時として最高額の罰金を当局に支払った。こうした軌跡を経て、彼はこの時代の強欲と不品行を象徴する存在となった。
ボウスキーは1986年にカリフォルニア大学バークレー校経営大学院の卒業式でスピーチを行い、学生たちにこう語った。「強欲は正しい。そのことを知ってほしい。強欲は健全だと思う。強欲であっても、自分を誇らしく思うことはできる」。
金儲けに徹した人生
その1年後、彼のこの発言はオリバー・ストーン監督の1987年の名作『ウォール街』でマイケル・ダグラス演じるゴードン・ゲッコーのセリフに取り入れられたこ。この作品でダグラスはアカデミー主演男優賞を受賞した。
「重要なのは、紳士淑女の皆さん、強欲は、なんというか、善であるということだ」と、ゲッコーは株主に語る。「強欲は正しい。強欲は役に立つ。強欲は進化の精神を明確にし、切り開き、惹きつけるのだ」
ストーンが作り出したゲッコーは、ボウスキーだけでなく、株式仲買人として成功したストーンの父ルイス、投資銀行家デニス・レビーン、アートコレクターのアッシャー・エデルマン、ハリウッドの代理人マイケル・オービッツなど、当時の金融界で有名だったさまざまな人物を組み合わせたキャラクターと言われている。
転落した後も、ボウスキーは生涯を通じて「ゲッコー・スタイル」を体現していた。高級ブランドを身にまとい、リムジンや自家用飛行機で所有する複数の邸宅を行き来していた。
「相当な額の資産があった」と、ボウスキーは93年の離婚協議の手続きで述べた。「私たちはパームビーチ、パリ、ニューヨーク、南フランスに家を所有していた」。ニューヨーク州ウェストチェスター郡にも約900平米の邸宅を所有しているが、これは建国の父トーマス・ジェファーソンの邸宅モンティチェロに似せたドーム屋根のある豪邸に改築したものだ。
「アイバン・ボウスキーにとって重要だったのは、金儲けだった」と、作家のジェフ・マドリックは2019年にニューヨーク・タイムズに語っている。
【動画】ボウスキーの成功と転落
【動画】映画『ウォール街』の一場面
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