イスラエルの空爆で破壊された家を見つめるパレスチナの少女=パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファで2024年5月20日、ロイター

 国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)が20日、戦争犯罪などの疑いでイスラエルのネタニヤフ首相やイスラム組織ハマス幹部らの逮捕状を請求したのを受け、イスラエルが猛反発している。イスラエル当局者はICCの決定を「無礼で偽善的だ」と非難。ただICCが逮捕状の発行に踏み切れば、ICC加盟国への自由な渡航は難しくなり、外交が大きく制約される可能性がある。

 「ICCの動きはばかげたもので、イスラエル全体を標的にするものだ」。ネタニヤフ首相は20日、ICCを痛烈に批判した。

 カッツ外相は省内に逮捕状請求に対抗する専門チームを開設するように指示。ヘルツォグ大統領もX(ツイッター)に声明を投稿し、各国のリーダーにICCの動きを断固として非難するように呼びかけた。

 イスラエルが反発する背景には、自国の首相らをテロリストと見るハマスと同列に扱われたことがある。イスラエル側とすれば、昨年10月に始まった戦闘はハマスの越境攻撃でイスラエル人ら1200人が殺害されたことを受けて始まったものだ。人質になった人の中には性的暴行などを受けた人もおり、ネタニヤフ首相は「ハマスという怪物と世界で最も道徳的なイスラエル軍をどうして比較するのか」と主張した。

 しかし、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘では、既にパレスチナ側で3万5000人以上が死亡している。物資の搬入を厳しく制限することで、飢餓で亡くなる子どもも続出。各国から自制を求められた最南部ラファでも軍事作戦を開始した。イスラエル軍は、ハマスの軍事活動を止めるため、ラファでの作戦は少なくとも今後、半年はかかると主張する。

 これまでもイスラエルの過剰な自衛権の行使は問題視されており、イスラエルの人権団体「拷問に反対する公共委員会」は20日、逮捕状の請求について「イスラエルの指導者たちが享受してきた免責の時代の終わりを告げるものだ」との声明を出した。

 一方、ハマスも、指導者ハニヤ氏らに逮捕状が請求されたICCの発表に反発している。声明でネタニヤフ首相らへの逮捕状請求が遅く、この間に多くの市民が犠牲になったと主張。ハニヤ氏らに対する逮捕状請求を取り下げるように求めている。

 ICCは今後、予審判事部が逮捕状を発行するかどうかを判断する。イスラエルはICC非加盟で、逮捕状が発行されたとしても、ネタニヤフ首相らの身柄が引き渡されることはないが、日本などICCに加盟する120以上の国と地域を訪問すれば逮捕される可能性がある。【エルサレム松岡大地】

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