現場で取り押さえられた容疑者の男性=スロバキア中部で2024年5月15日、ロイター

 東欧スロバキアのフィツォ首相(59)が15日、政府の会議のために訪れていた中部ハンドロバで銃撃され病院に搬送された。71歳の容疑者の男性が現場で拘束された。シュタイエシュトク内相は「政治的な動機」による銃撃だと指摘。フィツォ氏は一時重篤だったが、タラバ副首相は同日夜、英BBCに対し「命が危険な状態は脱した」と明らかにした。

 ロイター通信などによると、フィツォ氏は会議があった建物から出てきたところを銃撃された。周囲は握手を求める市民らで人だかりができていたという。発砲は5発あり、腹部などに命中した。フィツォ氏はヘリコプターで病院に搬送され、手術を受けた。

 ロイターによると、現地メディアは容疑者の男性について、ショッピングセンターの元警備員で銃の免許を持っていたと報じている。詳しい動機は明らかになっていない。

病院に搬送されるスロバキアのフィツォ首相=スロバキア中部で2024年5月15日、ロイター

 フィツォ氏は昨年9月の総選挙で自らが率いる中道左派政党「スメル(道標)」が第1党となり、10月に首相に返り咲いた。就任後はウクライナへの支援を停止するなどロシア寄りの姿勢をとった。国内では汚職対策に取り組む特別検察を廃止したり、メディア統制を進めたりするなど、強権的な政権運営を進める。反発も強く、その政治手法に抗議するデモがたびたび起きている。

 首相が銃撃されるという事態に、欧米の首脳らからは非難の声が上がっている。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は「私たちの最も価値ある共有財産である民主主義を侵害するものだ」とX(ツイッター)に投稿した。バイデン米大統領も「恐ろしい暴力だ」と非難した。一方、ロシアのプーチン大統領は「フィツォ氏は勇気と強い心を持った人だ。困難な状況を乗り切ることを願っている」と述べた。【ベルリン五十嵐朋子】

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