日本国内でも販売されている肥満症の治療薬が、患者の体重に関係なく心臓発作や脳卒中のリスクを低減させることが、イギリスの研究で明らかになった。

イギリスのユニバーシティー・カレッジ・オブ・ロンドンのディーンフィールド教授は13日、イタリア・ベネチアで開かれた学会で肥満症の治療薬「セマグルチド」が、減量効果の他に、心臓発作や脳卒中のリスクを約20%低減させる効果が見られたと発表した。

「セマグルチド」はデンマークの製薬会社が開発したもので、日本では「ウゴービ」として2024年2月から販売され、医療機関で患者への処方が始まっている。

発表によると、心臓発作や脳卒中を起こしたことのある45歳以上の1万7604人が参加した治験で、参加者の半数に「セマグルチド」を投与し、残りの半数には偽薬=プラセボが使われた。

3年4カ月にわたる試験の結果、「セマグルチド」を投与されたグループは、心臓発作や脳卒中、そして心臓病による死亡のリスクが20%低下し、体重も平均で9%減少したという。

ディーンフィールド教授は「体重が減らなくても、あるいは体重がほとんど減らなくても、同じ心血管系の効果が得られる」としている。

「セマグルチド」には、食欲を抑える働きがあり、アメリカではFDA=アメリカ食品医薬品局が供給が不足していると公表するなど、世界的な需要の高まりに供給が追いつかない状況となっている。

厚生労働省などは対象となる肥満症患者の明確な条件についてのガイドラインを公表した上で、「ダイエットなどを目的に投与してはならない」としているほか、副作用に対して適切な処置ができる体制を整備するよう求めている。

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