警官の助けを借りて避難準備をするハルキウ州ボウチャンスクの住民たち(5月12日) REUTERS/Vyacheslav Madiyevskyy
<ハルキウ市包囲を目論むにはロシア軍は人員不足と、米シンクタンクは指摘する>
先週後半にウクライナ北東部ハルキウ(ハリコフ)州への攻勢を強めたロシア軍だが、アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)に言わせれば、これはアメリカからの追加軍事支援の到着を考慮に入れていない「無茶な」攻勢だ。同州の当局者は住民の避難を急いでいる。
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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は10日、ロシアがウクライナ軍に対する「作戦の拡大を試みた」と述べた。これを受けてウクライナ軍は、ロシアと国境を接するハルキウ州に展開する部隊を増強しているという。
ハルキウ州当局者は、ロシア国境に近い町ボウチャンスクで、ロシアからの砲撃と攻撃が激しくなっていると語った。ボウチャンスクはウクライナ第2の都市ハルキウ市の北東にあり、数週間前からロシア軍の空からの攻撃を受けていた。
ISWが11日に公開したリポートによれば、ロシア軍がハルキウ州に投入している戦力は今のところ限定的だ。ウクライナ軍にはアメリカからの追加軍事支援が近く届くことを思えば、これは「大胆な決断」だと指摘した。
攻勢の規模は現時点では「限定的」
「ハルキウ州北部における限定的なロシア軍の攻勢作戦からは、アメリカからの軍事援助の再開を受けても(ロシアのウラジーミル・)プーチン大統領の読みは変わらなかった、もしくは軍事支援再開を受けたウクライナの反撃能力(の向上)という、今作戦の根本的な前提を再検討することなくプーチンがハルキウ州での攻勢に踏みきったことがうかがえる」と、ISWは11日に述べた。
現時点においてロシアは「この地域の攻撃作戦に限られた量の戦闘能力を投入しているだけだ」とISWは見ている。
ウクライナ国防省は10日、ロシアが現地時間午前5時ごろ、ボウチャンスク周辺に誘導弾を落とすとともに、装甲車両で防衛線を突破しようとしたと明らかにした。これを受けてウクライナ軍は予備役部隊をハルキウ州に送ったという。
ロシアはここ数カ月、東部ドネツク州での作戦にも力を入れており、すでに制圧したバフムートやアブディイフカの西側でゆっくりではあるが占領地域を広げていた。
「今週、ハルキウ州での状況は大きく動いた」と、ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は12日、述べた。「状況は困難だが、ウクライナ軍は防衛線および陣地を維持するためできる限りのことをしている」
本誌はロシア国防省に電子メールでコメントを求めたが回答は得られていない。
米連邦議会は4月末になってようやく、ウクライナ向けの追加軍事支援の予算案を可決。ウクライナは欧米からの軍事支援に大きく依存しており、ロシアはウクライナ国内の防衛インフラを標的にしている。
予算案が可決された際にアメリカ政府は、現地に向けた軍事支援の輸送をできるだけ早急に開始すると述べていた。
ロシア国防省は11日、ロシア軍がハルキウ州のロシア国境に近い5つの集落を「攻撃行動」を経て掌握したと明らかにした。
ハルキウ州のオレフ・シネフボウ知事は12日、同州ではこれまでに4000人以上が避難したと語った。またゼレンスキーは11日、ウクライナは国境沿いで反攻作戦を行っていると述べた。
またISWは、ロシア軍は「この地域で行われている攻勢作戦をさらに強化するため、近々」予備役を招集するだろうとの見方を示した。
「もっとも、入手可能なあらゆる資料から見るに、ロシア軍はハルキウ市を包囲し制圧するような大規模な攻勢作戦を行うには人員不足だ」とISWはリポートで指摘した。ロシア政府はハルキウ市に向けて進軍する一方で、ウクライナの戦力を前線の他の地点からこちらに引きつけたいのだろうとISWは分析している。
ロシアがウクライナ国内にさらに侵入し、ボウチャンスクのような国境近くの比較的大きな町への攻勢を強めようとすれば、ウクライナ軍の「ますます激しい抵抗」を受けるだろう、とISWは言う。
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