頼清徳はかつて自らを「台湾独立派」と明言していたが…… Alex Chan Tsz Yuk/Sipa USA-Reuters

<地政学的に最も重要な新指導者として、5月20日に就任。対中関係、経済政策で何を語るかを世界が注視している>

台湾では5月20日、頼清徳(ライ・チントー)新総統が誕生する。就任式で頼が何を語るのか、特に対中国政策について当日まで多くの臆測が飛び交いそうだ。

民主選挙で選ばれた全指導者の1期目と同様、頼も最大の望みは2028年の選挙で2期目の政権を勝ち取ること。だから16年5月20日の蔡英文(ツァイ・インウェン)現総統の最初の就任演説は、大いに参考になる。20年5月20日の蔡の2度目の就任演説も比較対象として有益だ。

頼の就任演説で注目すべき点は以下の5つだ。

①台湾独立

17年9月26日、当時行政院長(首相)だった頼は、立法院(国会)で自らを「実務的に働く台湾独立派」と表現した。就任演説でも同じ表現を繰り返すのか。この発言は中台関係をめぐる頼の最も有名なコメントだ。

行政院長時代と違い、総統の立場でこれを言うのは容易ではない。アメリカの圧力と中国の反応に対する懸念を考えれば、同じ発言を繰り返すのは不可能だ。代わりに中台関係に関する蔡の路線を継承して「現状維持」を強調する可能性が高い。

②中国への言及

「台湾独立派」という立場を再度表明できない以上、頼は中国と台湾を別々の国として表現するほかの方法を見つける必要がある。中国を「対岸」や「大陸地区」などと呼んでも、双方ともに相手方に対する主権を有していない、と強調する目的は達成できない。

20年の蔡の就任演説では、北京語で「対岸」とした部分が、英語版では「China」と訳されていた。蔡の演説で中国に直接言及した部分はこれだけ。頼にとって簡単な解決策は、演説で中国を一貫して「China」と言及することだろう。

③「中華民国」への言及

元旦や国慶節などで総統が重要演説を行うとき、記者やコメンテーターは必ず台湾を正式名称の「中華民国」と呼ぶ回数と「台湾」と呼ぶ回数を調べる。

例えば昨年10月、蔡の最後の国慶節演説では「中華民国」が5回、「台湾」が37回だった。頼もおそらく1、2回は「中華民国」に言及するだろうが、「台湾」を使う回数のほうがずっと多くなりそうだ。

④経済目標

蔡は16年の就任演説の多くを経済問題に割き、「経済構造の転換」を呼びかけた。蔡の経済政策は「将来を見据えたインフラ建設計画」「循環型経済」「5+2産業イノベーション政策」といった流行語を生んだ。

今年1月の総統選で経済問題が大きなテーマになったこともあり、この分野での頼の姿勢には強い関心が寄せられている。高齢者介護、住宅価格、低賃金など、重要な社会問題に就任演説でどれだけ言及するかは注目の的だ。

⑤野党との関係

前任者の蔡や馬英九(マー・インチウ)と違い、頼は立法院の過半数を野党側に握られている。今年2月の立法院の新会期開会から数カ月、野党・国民党主導の立法院と頼の民進党が主導する行政院・総統府の関係が前途多難なものになることを示す状況が既に多数生じている。頼は演説でこの状況に言及し、国民党との協力を申し出るのか。

頼と野党の関係は、立法プロセスや頼政権を監視しようとする議会多数派の意向に加え、頼が蔡から引き継ぐ「移行期正義(民主化以前の人権侵害などの問題)」への対処によっても左右される。

今年、世界中で多くの選挙が行われているが、頼は最も注視され、地政学的に最も重要な役割を担う新指導者の1人だろう。

From thediplomat.com

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