ユーロビジョン・ソング・コンテスト決勝でブーイングを浴びるイスラエル代表、エデン・ゴラン(5月11日、スウェーデンのマルメ)   REUTERS/Leonhard Foeger

<欧州最大の国別対抗音楽祭へのイスラエル参加に、ボイコットを求める声が続出。決勝の舞台ではイスラエル歌手の勇気に称賛も>

5月11 日にスウェーデンのマルメで開催された欧州最大の国別対抗音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」の決勝に出場したイスラエルのソロ・アーティスト、エデン・ゴラン(20)は、自作の曲「ハリケーン」を披露し、すさまじいブーイングを浴びた。

【動画】ユーロビジョン会場を揺るがすイスラエル歌手への大ブーイングが可視化した分断

アリーナ内からX(旧ツイッター)に投稿された数多くの動画には、その大ブーイングと、「パレスチナに自由を!」というコールが連鎖する様子が映し出されている。生中継では聞こえなかった。

一方、アリーナ内からの報道によると、ゴランは多くの喝采を浴び、イスラエル国旗を振るファンもいたという。

2023年10月7日にパレスチナの過激派組織ハマスがイスラエルに攻撃を仕掛けて以来、世界中で緊張が高まっている。イスラエルはハマスへの報復として、ガザに対する最も激しい空爆を開始した。AP通信によると、ハマスの攻撃で少なくとものイスラエル人1200人が死亡した。一方、ガザ保健省によれば、イスラエルの空爆でガザに住むパレスチナ人3万人以上が死亡したという。

タイムズ・オブ・イスラエル紙のエイミー・スピロ記者がXに投稿した動画には、決勝のパフォーマンスを終え、支持者に囲まれて感極まるゴランの姿が映っている。ゴランはイスラエル国旗を持ってステージをパレードした。

元タイトルは「10月の雨」

ゴランは5位に入賞し、11日の午後にはソーシャルメディアにたくさんの支持の声が寄せられた。イスラエルの作家ヘン・マツィグはXに投稿した。

「いろいろなことがあった後で、この驚くべき20歳の天使は、多くのブーイングを浴びながら、全ヨーロッパを前にステージに立ち、私たちはユダヤ人を非難する連中が言うような存在ではないことを思い知らせた。私たちは強く、たくましい」

ゴランは、ユーロビジョンの決勝前に、映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』でワンダーウーマンを演じたイスラエル人女優ガル・ガドットからも電話を受けた。

「私にはたくさんのアンチがいる。私のせいで映画がボイコットされた国もある。そんなことはどうでもいい。ヘイトをばらまく人間のほうが負けなんだから」と、ガドットはゴランに語ったという。

イスラエルを締め出そうという抗議は、音楽祭の前から続いていた。

ロイター通信によると、ゴランの曲名はもともと「10月の雨」だったが、大会前に「ハリケーン」に変更した。ユーロビジョンの主催者が元のタイトルは、明らかに10月7日のハマスの攻撃を意味していると感じたからだ。

オリジナルの歌詞には、ハマスの攻撃によって、窮屈な環境で避難生活を余儀なくされた人々を指すかのような「息をする空気も残っていない」や、ハマスが攻撃をしかけたパーティーの参加者や攻撃で殺された子供たちを暗示するかのような「みんな、いい子たちだった」という歌詞も含まれていた。

その歌詞も見直され、「日々、私はおかしくなっていく」「私はまだこのハリケーンで傷ついている」といった表現になった。

ゴランは、歌の内容を擁護し続けた。「メッセージは明確だと思う」と、彼女は今年3月に語っている。「この歌は、個人的な危機、つまりハリケーンを経験している女性のことを歌っている」

11日に決勝が行われたマルメでは、世界1億8000万人が視聴するこの音楽祭にイスラエルが参加することに対して、何千人もの人々が抗議した。

大勢の群衆がパレスチナの旗を振りながら、会場に向かって行進し、大会の公式スローガン「音楽で団結」をもじった「ジェノサイドで団結したユーロビジョン」と非難した。

警察の推定によれば、11日のデモに参加した人数は6000~8000人とみられる。

ロイター通信によれば、9日にスウェーデンで行なわれた準決勝の前には、1万人以上の親パレスチナ派が集まったという。ゴランの支持者は比較的少数で、平和的なデモを行い、ゴランの出場権を擁護した。

最終的に優勝したのは、ジェンダーにとらわれないアイデンティティを受け入れるまでの道のりを歌ったオペラ風のポップラップ「ザ・コード」を歌ったスイス人歌手のネモだった。

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