ソウルのビジネス街

「反射利益(パンサイイキ)」とは、韓国人がつくった数少ない四字熟語の1つと言えるのだろう。外国で大規模な災害や事故、あるいは事件があると、韓国のマスコミには、この言葉が頻出する。国民性の反映のようにも思えてくる。

「1つと言えるのだろう」と、回りくどい書き方をしたのは、日本にも「反射的利益」という行政用語(準法律用語)があるからだ。韓国のネイバー事典(知識百科)を見ると、「反射的利益(パンサチョクイイキ)」の略語が「反射利益」であるかのように記述している。日本の「反射的利益」を〝いただき〟してできたのが韓国語の「反射利益」である可能性があるのだ。

しかし、両者は意味が違う。

「反射的利益」とは、公益目的実現のため、法がある行為を規制した結果、別の人が利益を受けることだ。

これに対して「反射利益」とは、自助努力や法律ではなく、他者の不本意な落ち込みにより得られる利益を指す。

2009年に、日韓の大手出版社が共同編集した「朝鮮語辞典」に、この言葉は載っていない。

10年にトヨタが米国で大規模リコールに巻き込まれると、大手マスコミで使われるようになった。

「トヨタのブランドには汚点となるもので、相対的に価格の安い現代自動車は反射利益を得られるだろう」(中央10年1月28日)などと。

一挙にメジャーなマスコミ用語になったのは11年の東日本大震災からだった。地震から2日後には、「半導体・油化・精油など短期的には韓国企業に反射利益」(中央日報11年3月13日)と見出しにも登場した。

朝鮮日報(11年3月20日)は「証券会社の不謹慎リポート」と題する記事で、日本の不幸への〝悪乗り煽動〟を諫(いさ)めたが、中央日報(11年6月17日)は「日本の地震で反射利益…現代・起亜の疾走期待」と煽った。

こうして、「反射利益」は、庶民の日常用語として拡散した。

そして、台湾の大地震。韓経ビジネス(24年4月6日)は「TSMC(台湾積体電路製造=半導体受託生産の世界最大手)、840億ウォンの損失…K半導体に反射利益来るか」との展望記事を掲載した。

「ファウンドリー(半導体受託生産)供給ラインの中心がTSMCから韓国の半導体メーカーに移る可能性がある」

「(証券アナリストは)長期的に反射利益が期待されると展望」

「反射利益」―嫌な言葉だ。(ジャーナリスト・室谷克実)

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