ウクライナのドローンが突っ込んだロシアのビジネス都市カザンの高層ビル(12月21日) Reuters

<攻撃されたカザンは10月にBRICS首脳会議が開かれたばかりのビジネス都市。ウクライナ無人機の性能を誇示するとともにプーチンの顔に泥を塗った>

ロシア当局によれば12月21日朝、西部の都市カザンがウクライナによるドローン(無人機)攻撃を受けた。

【動画】まるで9.11...ウクライナの無人機が露カザンの高層ビル上層階に「正面から突入」する決定的瞬間

カザンはロシア連邦を構成する共和国の1つ、タタールスタン共和国の首都で、ウクライナとの国境からは1000キロ以上離れている。

21日にSNSに投稿された動画には、カザンにある集合住宅にドローンが衝突する様子が捉えられていた。カザンでは10月下旬にBRICS首脳会議が開催されたばかり。

ブラジル、インド、中国、南アフリカをはじめとする計9カ国の新興国首脳が集まったこの会議を、ロシアはグローバルサウス版のG7と位置づけていた。

本誌はウクライナとロシアの国防省にコメントを求めたが回答は得られなかった。

ウクライナの戦線から遠く離れたカザンで起きたこのドローン攻撃は、ウクライナがロシア領内の奥深くにまで攻撃の手を伸ばせることを見せつけたと言える。

ウクライナ側は必ずしも認めていないが、ロシアによれば、最近ロシア領内奥深くへのウクライナのドローン攻撃が増えている。

集合住宅を襲ったカザンへの攻撃を、ロシア当局は「テロ」行為と非難している。

もっともウクライナ当局によればロシア軍も、20日夜に南部ザポリッジャや北部ハルキウの建物を攻撃している。

タタールスタン当局によれば、カザンを襲ったドローンは少なくとも8機。攻撃は午前7時40分から9時20分の間に行われ、6機が集合住宅に、1機が産業施設に突っ込み、1機は撃墜されたという。

ロシア国防省は「ウクライナ空軍の3機の無人航空機(UAV)を防空システムが破壊した。他にも3機のUAVをサイバー攻撃で麻痺させた」との声明を出したが、カザンについては触れなかった。

だがカザン市長室はドローンが市内3カ所で集合住宅にぶつかったと明らかにしている。また、テレグラムのチャンネル「シレーナ」には、2機のドローンが37階建ての高層住宅に衝突する動画が投稿された。また、他に23階建てのビルに2機のドローンがぶつかる動画も出回っている。

テレグラムの「VCHK-OGPU」チャンネルは、集合住宅から火が上がる様子の動画を投稿した。VCHK-OGPUはロシアの治安当局と関係のあるチャンネルを自称している。

地元当局によれば死者は出ていないが、テレグラムの「ショット」というチャンネルは、3人が負傷したと伝えている。主に割れた窓ガラスの破片による切り傷だという。ロシア当局はテロ攻撃として捜査を開始した。

周辺の建物や学校にいた人々は避難した。動画には、大勢の人々が地下鉄の構内に避難している様子が捉られている。

ウクライナ在住でウクライナ支持のアメリカ人「ジェイ・イン・キーウ」はX(旧ツイッター)にこう投稿した。「ウクライナ国境から1000キロメートル離れたところに建つこのビルの15階で非常に重要なことが起きた。ロシアのカザンで、2機のドローンが精密に同じ場所を狙って攻撃を行った」

同じくウクライナを支持する教育関連企業の幹部、ユルゲン・ナウディットはXにこう投稿した。「またもやウクライナのカミカゼUAVが、ロシアのカザンにある21階建ての高層住宅『マンハッタン』の屋根を攻撃した。ウクライナのUAVの航続距離は1000キロを超えた」

ロシアの独立系メディアのメデューサによれば、ドローン攻撃を受けて航空当局はカザンや周辺のサラトフの空港を閉鎖。また、この週末に予定されていたすべての大きなイベントを中止した。

カザンへの攻撃が行われた21日朝、ウクライナは直接・間接の関与を明らかにしなかった。だが、こうしたロシア領内へのドローン攻撃は今後も続くとみられる。

一方で、ロシアも21日、ミサイルやドローンを使った攻撃をウクライナに対して行い、キーウで少なくとも1人が死亡した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はカザンへの攻撃の報復として、何倍もの破壊をウクライナにもたらすと宣言している。


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