岸田文雄首相は4日(日本時間5日)、ブラジルのサンパウロ大学で講演し、日本としては10年ぶりとなる新たな中南米政策を発表した。グローバルサウス(新興・途上国)として存在感を高めている中南米諸国に対し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化へ協調を呼びかけ、貧困や格差の解消へ日本が貢献する姿勢を強調した。
また今後3年間で1000人規模の人的交流も打ち出した。中国を念頭に、過度な貸し付けを通じて影響力を行使する「債務のわな」を批判し、持続可能な経済協力の重要性も訴えた。
首相は講演で、中南米に対して、「価値と原則を共有し、グローバル課題の解決に積極的に貢献できる」と期待感を表明した。その上で、ともに取り組むべき課題として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の確保▽環境や気候変動など人類共通の課題克服▽持続可能な成長実現▽人的交流の強化――などを提示した。
また、中国を念頭に「経済的圧力を背景に特定の行動を強いる経済的威圧などは到底認められない」と強調し「相手国の実情を踏まえ、『質の高いインフラづくり』など持続可能な経済協力を推進していく」と提唱。日米欧と中露の対立で機能不全に陥っている国連安全保障理事会の改革についても「具体的行動を進めていく」と表明した。
米国への大量流入が問題化している移民問題を巡っては、収容・教育施設への支援や女性の保護に貢献する考えを説明した。熱帯雨林アマゾンの保護や、地球温暖化による海面上昇の被害を受けるカリブ海の島しょ国への支援も約束した。
中南米は33カ国に約6億6000万人を擁し、国内総生産(GDP)の合計は約6兆2500億ドルを誇る。ブラジルやメキシコなどが国際社会で存在感を高めている一方、重要鉱物や食糧の確保などを巡って、中国の影響力強化が目立っている。【サンパウロ村尾哲】
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