米連邦議会下院は19日、当面の政府運営資金を手当てする「つなぎ予算法案」を否決した。トランプ次期米大統領の意向を反映し、ジョンソン議長(共和党)が急きょ作り直した修正案だったが、民主党に加え、身内の共和党からも反対が出た。現行のつなぎ予算の期限が20日に迫っており、政府機関の一部閉鎖懸念が強まっている。
「別の解決策を考え出すつもりだ。期待していてほしい」。下院の否決後、ジョンソン氏は記者団にこう述べたが、打開に向けた具体策は何も示さなかった。
ジョンソン氏が提案していた当初のつなぎ予算案は、2025年3月までの政府運営資金に、ハリケーン災害の復旧支援などを加えたもの。民主党指導部とも合意済みで、上下院での可決が見込まれていた。
だが、下院での採決を目前にした18日、トランプ氏は自らが運営するSNS(ネット交流サービス)に「民主党が望むものを全く与えない法案を可決すべきだ」と反対する考えを表明。ジョンソン氏は当初案を破棄せざるを得なくなった。
トランプ氏がつなぎ法案支持の条件として持ち出したのが、連邦政府の借金の限度額を定める「債務上限」問題の解決だ。現行法で一時停止されている債務上限は25年1月に「復活」する。上限引き上げや再停止などの法案を可決しなければ、政府は新たな借金ができなくなり、1月20日に発足するトランプ政権の足かせになるとみられていた。
トランプ氏は19日、米ABCテレビのインタビューに「債務上限を何とかしない限り、何も承認されない」と明言。ジョンソン氏はトランプ氏の意向をくみ、債務上限の適用停止を27年1月まで2年間延長する内容を加えた修正案を急きょ作成した。
トランプ氏は「素晴らしい取引(ディール)だ」と支持したが、当初案を破棄された民主党は猛反発。共和党内からも「筋が通らない」などと反対の声が上がった。
採決の結果は賛成174、反対235。共和党からも38人が造反し、ジョンソン氏の急ごしらえの戦略は失敗に終わった。
上院民主党トップのシューマー院内総務は「今こそ超党派の合意に戻るべき時だ」と述べ、政府閉鎖回避に向け下院が当初案を採決するよう求めた。だが、自らへの忠誠を誓う人物で身の回りを固めるトランプ氏の要求を、ジョンソン氏が切り捨てるのは容易ではない。20日中につなぎ予算が成立しなければ、政府機関の一部閉鎖に追い込まれる。
政府閉鎖が最後に起きたのはトランプ前政権下の18年12月~19年1月。トランプ氏と蜜月関係にあるイーロン・マスク氏は「おかしな法案を通すより、政府閉鎖の方がずっと良い」などとX(ツイッター)に投稿しており、多くのフォロワーやトランプ氏支持者が同意している。【ワシントン大久保渉】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。