日本時間の19日夜、ロシアのプーチン大統領が4時間半に及ぶ恒例の年末会見を行った。その会場に日本のメディアでは唯一、テレビ朝日のカメラが入った。
■トランプ氏就任まで1カ月 停戦呼びかけにどう出る?
恒例の長時間会見 今年は? この記事の写真まずは、会見の内容を見ていく。4時間半に及んだ会見は、ロシア全土に生中継された。
午後6時から始まったのが、「プーチン大統領 今年の成果」と題した恒例の会見。国内外のメディアを招いての大規模な会見で、それに併せてプーチン大統領がテレビ通話で国民の質問に答える「国民との直接会話」も行われた。
電話やインターネットを通じて寄せられた質問や要望はおよそ250万件。会見時間は4時間27分に及び、プーチン大統領は記者31人、一般人26人から寄せられた計74の質問に回答した。ちなみに去年は4時間4分だったので、今年は20分以上延びた。
ウクライナ情勢をどう語った?会見では、ウクライナ情勢についても語った。
まず、戦況については「(侵攻)当初掲げた目標に近づいている」と発言。また、ウクライナへの攻撃に使用した新型の中距離弾道ミサイル「オレシュニク」については「キーウを攻撃したとして、西側は防衛できるのか?撃墜できると思うなら試してみるといい」と述べた。
“トランプ停戦”にプーチン氏の戦略は?一方、停戦に向けてすでに動き出しているのが、アメリカのトランプ次期大統領だ。
来月20日の就任式を前にトランプ次期大統領は7日、パリでウクライナのゼレンスキー大統領と会談。会談後、トランプ次期大統領はSNSで「早急な停戦と和平交渉の開始が必要だ」とし、「私はウラジーミルをよく知っている。彼が動く番だ」とプーチン大統領に呼びかけるような投稿をした。
これに対し、プーチン大統領は19日の会見で「彼が望むのであれば、いつでも会う準備はできている」と述べた。
ロシア側の停戦交渉条件また、「交渉と妥協の用意がある」とも発言。ウクライナへの提案については、今年6月の演説で「すべて述べた」「繰り返す意味はない」と語った。
この6月に提案したロシア側の停戦交渉条件というのがルハンシク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソンの東南4州からのウクライナ軍の完全撤退。さらに、ウクライナのNATO加盟計画の放棄だ。
トランプ次期政権の停戦案一方、トランプ次期政権はどのような形での停戦を考えているのか。案が2つ出てきている。
まず、新設されるウクライナ・ロシア担当特使に指名されたケロッグ氏の案は「現在の戦闘ラインを凍結し、アメリカが安全を保証する」というもの。もう一つ、バンス次期副大統領が明らかにした案は、「前線に非武装地帯を設置し、厳重に要塞化する」というもの。どちらも、ロシア側の提案とは溝がある。
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■長引く戦時経済で国内苦境 「バター泥棒」多発も■長引く戦時経済で国内苦境 「バター泥棒」多発も
ロシア経済をめぐる発言は?続いて、長引く戦時経済、インフレ加速のなか「バター泥棒」も各地で多発しているという。会見では、ロシア経済が好調であるかのような発言があった。
プーチン大統領は会見で、国内経済について「ロシアの経済状況は全体的に正常で安定している」と述べ、ウクライナ侵攻による経済制裁の影響などは否定した。
実際、数字で見てみると、IMF(国際通貨基金)が予測するロシアの今年の実質GDP成長率は3.6%。アメリカの2.8%、先進国の平均1.8%よりは高い。
ロシア国内の苦境 歴史的インフレただ、ロシア国内では苦境が伝えられている。
年間インフレ率は9.0%前後で、インフレを抑えるために引き上げられた10月の政策金利は21.0%と、記録的な高さとなっている。
背景にあるのが、行きすぎた戦時経済。つまり、戦争を最優先した結果だという。労働力の多くが、戦場や軍需産業に集中し、それ以外の非軍事部門の業界は人手不足となっている。そのため失業率は低いが、人件費が高騰。これが、商品などの価格に転嫁されている。
「バター泥棒」各地で多発例えば12月の消費者物価指数を見ると、去年の同じ月に比べ、バターは34.4%、ジャガイモは88.9%、タマネギは45.4%上昇している。
そうしたなか、地元メディアによると、こんなことが起きている。
11月、ロシア中部エカテリンブルクのお店に、男2人組が侵入。1人がレジを襲撃し、もう1人がバター20キロを奪う様子を防犯カメラが捉えていて、その映像が話題になったという。バターは転売目的とみられていて、同様の「バター泥棒」が各地で多発していると報じられている。
それだけ物価上昇に苦しむ国民が多いなか、19日の会見でも司会を務めたスヴォロワ氏から「AIによる集計によると、バターなどの食料品の値上がりに関する要望が最も多かったようです」と発言があった。
バターの値上がりについてプーチン大統領は「牛乳の生産は増えたが、消費も増えていて、バターづくりに十分な量がない」と答えた。
プーチン大統領「インフレは危険信号だ」またプーチン大統領は会見で「インフレは危険信号だ」と述べたものの、「実質賃金の上昇がインフレ分を相殺している点を強調しておきたい。全体として状況は安定している」と発言し、問題はないと強調した。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年12月20日放送分より)
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