パキスタン軍が2017年7月に公開した戦術核ミサイル「ナスル」の発射実験の模様。車両から発射でき機動性が高い=パキスタン軍統合広報局のウェブサイトより

 ジョン・ファイナー米大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は19日、核保有国であるパキスタンによる最近の弾道ミサイル開発について「米国に対する新たな脅威以外の何物でもない」と警戒感を示した。首都ワシントンのカーネギー国際平和財団で開かれたイベントで語った。

 パキスタンは、核拡散防止条約(NPT)の枠外で核兵器を保有している。米軍備管理協会によると、170発の核弾頭を保有しているとみられる。核弾頭を搭載することができる戦術核ミサイル「ナスル」や中距離弾道ミサイル「シャヒーン2」(射程2000キロ)などを運用。地対地弾道ミサイル「シャヒーン3」(同2750キロ)の飛行試験にも成功したほか、一つのミサイルに複数の弾頭を搭載する「MIRV」技術も含め、能力を向上させている。

 ファイナー氏は、パキスタンが長距離弾道ミサイルシステムなどますます洗練されたミサイル技術を開発しているとし、「こうした傾向が続けば、パキスタンは米国を含む、南アジアを越えた地域の標的を攻撃できる能力を持つことになる」と指摘。パキスタンが国際社会の懸念を真剣に受け止めず、開発を続けていると批判した。

 バイデン政権は18日、大量破壊兵器と運搬手段の拡散を防ぐための大統領令に基づき、パキスタンの国家開発複合体(NDC)と3企業を制裁対象に指定した。米国内の財産を凍結し、米国の個人や企業が取引することを禁止する内容だ。

 国務省によると、NDCはイスラマバードに拠点を置き、「シャヒーン」ミサイルなど弾道ミサイル開発に責任を負っている。長距離弾道ミサイル開発のための部品や、ミサイル発射実験装置を入手してきたという。【ワシントン西田進一郎】

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