新たな国産ドローンミサイル「ペクロ(ヘル)」を披露するゼレンスキー大統領(左)シルスキー陸軍司令官(12月6日、キーウ)REUTERS/Valentyn Ogirenko

<射程700キロメートルのドローン型巡航ミサイル「ペクロ」の量産により安価で強力な兵器を確保>

ロシアとの戦闘が激しさを増すなか、ウクライナは現地語で「地獄」を意味する国産のドローン型巡航ミサイル「ペクロ」の増産に乗り出しているという。ウクライナのニュースメディア「プラウダ」の経済版「Ekonomichna Pravda」が伝えた。

「ペクロ」は過去3カ月で既に100基が製造されており、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2025年までに1000基の製造を目指していると発表した。

ウクライナの国防・航空宇宙企業「ウクロボンプロム」が製造する「ペクロ」は射程700キロメートル、飛行速度は最大で時速700キロメートルに及ぶ。ウクライナはこのほかにも巡航ミサイル「パリャヌィツィア」や「ルータ」をはじめとする数多くの兵器の開発を進めている。

強力なミサイルの生産拡大はウクライナにとって重要な意味を持つ。ロシア側は長距離兵器や以前にも増して強力なドローンが配備されるようになっており、この中にはロシア軍の極超音速中距離弾道ミサイル「オレシュニク」も含まれている。

ジョー・バイデン米大統領が、ウクライナが米国製の長距離兵器を使用してロシア領内への攻撃を行うことを許可して以降、ウクライナとロシアの戦闘は劇的にエスカレートしている。こうしたなかウクライナは「ペクロ」の生産を増やすことで、より安価なミサイルを大量に生産し、ロシアとの戦闘を継続するための兵器を確保することができる。

「ペクロ」ミサイルの開発は、弾頭が小型で「安価」かつ「敵陣の数百キロ離れたところから発射することができる」兵器が欲しいというウクライナ軍の要望を受けて行われた。2023年8月に最初の略図が作成され、それ以降、メーカーが試験と生産を進めてきた。

「ペクロ」は自爆型ドローンと同様に小型の弾頭を持つが、飛行速度は一般的なドローンの時速150~200キロを上回る。GPSと(コンピューターがミサイルの位置や標的を攻撃するのに必要な動きを独自に計算する)慣性システムの2つの誘導方式が導入されている。

開発元によれば、「ペクロ」の部品のうち70%はウクライナ国内の民間企業が製造したものだ。価格は公開されていないが、報道によればウクライナの国産自爆型ドローン「Feb」よりも安価だということだ。

ゼレンスキーは12月10日に行われたボリス・パトン賞(優秀な科学者に授与される賞)の授賞式で行った演説の中で、「ペクロ」ミサイルを含む最近の兵器開発について言及した。

「ミサイルドローンのペクロは最初の戦闘任務を無事に完了した。つい先日、ウクライナ軍の防衛部隊に第一弾のペクロミサイルを引き渡した」とゼレンスキーは述べた。英軍放送局のニュースサイト「フォーシズ・ニュース」によれば、「ペクロ」はこれまでに5回の任務で成功を収めている。

ゼレンスキーは「ペクロ」の生産について、「ウクライナの防衛部隊の元にこのような近代的な国産の兵器が届けられることは、きわめて重要だ。次なる課題はその生産と配備を拡大し続けていくことだ」と自身のウェブサイトで述べた。

本誌はこの件についてロシア国防省にメールでコメントを求めたが、これまでに返答はない。

ウクライナがミサイルとドローンのハイブリッド兵器である「ペクロ」の生産と配備を続けることで、ウクライナ軍が東部をはじめその他の地域でロシア軍の進軍を防ぐ方法に変化があらわれる可能性がある。

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