元サッカー選手の大統領選当選に、レッドカードで抗議する人々

<野党がボイコットする中で選出されたのは与党系の極右カベラシビリ元議員。現職大統領は「選挙は違法」と批判するが......>

旧ソ連構成国のジョージアで12月14日、大統領選挙が行われ、元サッカー選手で極右政治家のミハイル・カベラシビリが当選した。

カベラシビリは53歳。もともとは与党「ジョージアの夢」の国会議員だったが、その後、反欧米的で強硬な主張で知られる「人民の力」という政治運動の結成に参加した。

元プロサッカー選手で、1996〜97年にかけてイングランドの強豪サッカーチーム、マンチェスター・シティーでプレーしたほか、スイス・スーパーリーグでも複数のクラブを渡り歩いた。

ジョージアの大統領は国会議員と地方自治体の代表の投票で選ばれる。今回、立候補者はジョージアの夢から候補指名されたカベラシビリ1人で、225票のうち224票を獲得した。大統領の役割は主に、儀礼的なものに止まる。

10月26日の国会議員選挙ではジョージアの夢が得票率54%で勝利したが、野党はロシアの干渉を受けた不正選挙を疑い、再投票を要求。選挙以降、すべての野党が国会をボイコットしている。

首都トビリシでは大統領選に反対する数百人がデモをした。議事堂前でサッカーをしながら手にしたレッドカードを振る人たちもいた。

親欧米派のサロメ・ズラビシビリ大統領は、現在の国会は違法な状態にあるとの見方を示すとともに、任期が切れた後も大統領職に留まり続けると述べた。

AP通信によれば、ズラビシビリはソーシャルメディアのX(旧ツイッター)にこう投稿した。「私は大統領職に留まる。法的に認められた国会は存在しておらず、よって合法的な選挙も就任式もありえない。私が(大統領職の)付託を受けた状態は続いている」

ズラビシビリはこうも述べたという。「ロシアはジョージア対してもモルドバに対してもルーマニアに対しても、選挙干渉など硬軟さまざまな手段を取り合わせたハイブリッド戦争を仕掛けて民主主義の歩みを妨害しようとしている。これは選挙に対する戦争であり、欧州に対する戦争だ」

またズビラシビリは、野党が暴力を扇動しているという政府の主張を一蹴した。「われわれは革命を求めているわけではない」とズビラシビリはAPに対して述べた。「選挙のやり直しは求めているが、それも国民の意思がねじ曲げられて解釈されたり、不正選挙が行われたりしないことが条件だ」

「ジョージアは常にロシアの干渉に抵抗してきたし、選挙結果や国の運命を(ロシアの)好き勝手にされて黙ってはいない」

有力野党「統一国民運動連合」を率いるギオルギ・バシャゼは、ズビラシビリ大統領が「唯一の正統な権力の持ち主」だと述べた。

だが、イラクリ・コバヒゼ首相(ジョージアの夢)はカベラシビリの当選について「ジョージアの国家としての立場とわれわれの主権を強化するとともに、過激主義やいわゆる社会の分断にブレーキをかけることにおおいに貢献するだろう」と述べた。

ジョージアの夢に対しては、権威主義とロシア寄りの姿勢を強めているとの批判があるが、ジョージアの夢はそれを否定している。

ジョージアの夢は先ごろ、言論の自由や性的マイノリティの権利を抑圧するのにロシアが利用しているのと同様の法律を国会で通過させた。

先月には、EU加盟交渉を停止するという決定を下し、野党の反発と激しい活動を招いて今日に至っている。

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