モスクワ戦勝記念日パレードで披露された重火炎放射器システム「TOS-1ソルンツェペック」(2020年6月) Bayhu19-shutterstock
<ウクライナ軍によって破壊されたロシアの火炎放射器は「灼熱の陽光」の異名を持つ、超高額兵器>
第3強襲旅団がテレグラムに投稿した動画によると、ウクライナ軍がロシアのサーモバリック火炎放射器(650万~1500万ドル、日本円で約10~22億円相当)1基を破壊したようだ。
【動画】「どんな射撃ゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「TOS-1」をウクライナ軍が破壊する劇的瞬間
ウクライナの軍事メディア「ミリタルヌイ(Militarnyi)」は、第3強襲旅団のFATUM部隊がロシアの重火炎放射器システム「TOS-1ソルンツェペック(TOS-1 Solntsepyok)」を破壊したと伝えている。
テレグラムの投稿は、ウクライナの攻撃を「射撃はどんなシューティングゲームよりも熾烈」だったと形容した。
ミリタルヌイによれば、火炎放射器は先にFPVドローンの攻撃で損傷していたらしい。同部隊はまた、人員や装備を運ぶトラックやUAZ車両など、多数の車両を破壊した。
ウクライナがTOS-1ソルンツェピョクを破壊した意味は大きい。防衛・軍事技術専門家のデビッド・ハンブリン(David Hambling)は過去に本誌の取材に対し、こうしたサーモバリック火炎放射器はロシア軍にとって「優先度の高い品目」でありながら、保有している数は「少ない」と指摘していた。
本誌はロシア国防省とウクライナ国防省に業務時間外の電子メールでコメントを求めた。
第3強襲旅団は9月にもウクライナ北東部ハルキウ州(Kharkiv)でソルンツェペック1基を破壊し、FPVドローンで攻撃していた。
別名「灼熱の陽光(scorching sunlight)」と呼ばれるTOS-1ソルンツェペックは、今回の戦争が始まって以来、ロシアが使用している希少かつ高額なサーモバリック火炎放射器で、多連装ロケット砲として機能し、サーモバリックロケット数十発を発射できる。
米陸軍士官学校(通称ウェストポイント)のリーバー研究所(Lieber Institute)によると、サーモバリック兵器は「爆発に伴う衝撃波と過圧を最大化することで損害を与える」。そうした兵器の使用で生じる圧力によって、建物が崩壊したり臓器が破裂したりすることもある という。
ウクライナ国防大学(National Defense University of Ukraine)によれば、焼夷弾を発射するサーモバリック火炎放射器の開発は1970年代の旧ソ連にさかのぼる 。米軍も1960年代にサーモバリック兵器を使用していた。
TOS-1の射程は5.6マイルで、90秒以内に発射準備が整う。通常の爆薬よりも長続きする「発火力と爆風効果」を生じさせる目的で使用される。
ロシアはTOS-1ソルンツェペックを「装甲車両や人員に対する攻撃、要塞の破壊」に使い、220ミリのサーモバリック弾を発射している。
ウクライナ軍はこれまでにロシアのサーモバリック火炎放射器数基を破壊しており、8月にはウクライナ南部のザボリージャ州で「TOS-1A」システムを破壊した 。この時はウクライナ保安庁(SBU)がFPVドローンを使ってTOS-1Aを攻撃した。
ウクライナ保安庁は以前、TOS-1ソルンツェペックをロシア軍の「誇り」と呼び、「前線の稀有な標的」と位置付けていた。
(翻訳:鈴木聖子)
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