抗議の声を圧殺するため、放水砲まで使われている(12月11日、トビリシ) AP/AFLO
<不正が疑われる議会選挙後に、与党がEU離れを鮮明にして市民の怒りが爆発>
ジョージアは今、岐路に立たされている。不正選挙の疑いが指摘されている10月の議会選で勝利した与党「ジョージアの夢」がEU加盟交渉を中断すると発表。多くの市民がこれに反発し、大規模な抗議デモが全土に広がっている。
この状況は2014年にウクライナで起きた「マイダン革命」を想起させる。ウクライナでも当時のビクトル・ヤヌコビッチ大統領がEUに背を向け、ロシアに擦り寄ったことで市民の怒りが爆発した。
治安当局は治安部隊を投入し、放水砲や催涙ガスを使用。ジャーナリストや活動家を逮捕するなど強権的な手法でデモを抑え込もうとしている。
親ロシアの「ジョージアの夢」は、選挙戦中にはEU加盟を推進すると約束していた。前党首で首相のイラクリ・コバヒゼはなぜ突然、22年に始まったEU加盟交渉を28年末まで凍結する方針を打ち出したのか。
理由は不明だが、旧ソ連崩壊時の混乱に乗じて蓄財した資産家で、与党の創設者でもあるビジナ・イワニシビリの意向が働いているのは確かだろう。
交渉中断を発表した11月28日の声明で、コバヒゼは自国を脅迫したとしてEUを非難した。同日、欧州議会は10月に行われたジョージアの議会選の投票プロセスは「自由でも公正でもなかった」と結論付け、選挙結果を無効とする決議を採択した。
それにより12月にはEU側からジョージアとの加盟交渉が打ち切られる見通しとなり、コバヒゼは相手が言い出す前に「交渉お断り」を宣言したのかもしれない。
西側の決断が鍵を握る
あるいは意図的に市民を挑発し、デモの鎮圧を口実に反政府派を一掃しようとした可能性もある。だとすれば、その読みは甘かったようだ。抗議デモはジョージア史上最大規模の広がりを見せている。
市民は自主的にデモに参加。中心となる指導者や政党は不在だが、デモの波は首都トビリシだけでなく、他都市や村々にまで広がっている。草の根レベルの運動がここまで広がったことが、EU加盟を望むジョージアの人々の揺るぎない決意を物語る。
政府機関の内部にもデモを支持する動きがある。国防省、外務省、司法省などの官僚が相次いでEU加盟交渉の中断に抗議する書簡に署名。ジョージアの国連大使も辞任した。
ジョージアの国家元首であるサロメ・ズラビシビリ大統領はEU加盟を推進する立場で、市民のデモを支持。公正な選挙を実施して有権者の意思を反映した新政権を発足させようと国民統一評議会を立ち上げた。
だが大統領の権限は限定的で、この試みを成功させるにはEUと米政府が強力かつ迅速に後押しする必要がある。
今後何日かが正念場だ。コバヒゼ政権が力ずくでデモを抑え込めば、EU加盟の望みが断たれるばかりか、この国の民主主義が崩壊しかねない。
ロシアはルーマニア、ブルガリアに次いでジョージアと、近隣諸国に次々に自国寄りの政権を打ち立てようとしている。西側がこれを阻止するには、独自の戦略が必要だ。
目下のターゲットはジョージア。ここ数日の西側の決断次第で、ジョージアの民主主義が強化され、親EU色が一層強まるか、権威主義に急傾斜し、ロシアの「衛星国」となるかが決まる。
From Foreign Policy Magazine
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