シリアのダマスカス近郊ドゥーマで、「化学兵器禁止機関(OPCW)」の査察団が訪れたとされる被害家屋を見守るジャーナリスト(2018年)REUTERS/ Ali Hashisho
<反政府勢力や市民に対し、何度も化学兵器を使用してきたアサド政権。その崩壊で、管理に関する懸念が>
バシャル・アサド大統領の政権が崩壊したのを受け、アメリカはシリアが保有する化学兵器に監視の目を光らせている。これは中東における「トップクラスの」優先課題というのがアメリカの見方だと、米政府高官は語った。
2011年に内戦が始まり、ここ数年は膠着状態が続いていた。だが反政府勢力が電撃的な攻勢を開始し、首都ダマスカスに侵攻。事態は急変した。
その高官によればアメリカは、シリアの化学兵器が悪意ある第三者の手に渡ることがないよう、事態を注視しているという。
「そうした(化学)物質が間違いなく誰の手にも渡らず、きちんと管理されるよう、われわれは手を尽くしている」と、シリア情勢について記者団に説明する中で述べた。
国家安全保障の専門家は、シリアの保有する化学兵器を「破壊」するか、もしくはその安全を守ることは可能だと「確信している」とも述べる。ただしその判断に至る詳細は明らかにしなかった。
また、化学兵器を守る、または破壊する目的で米軍をシリアに派遣する計画はないという。
シリアがどのくらいの量の化学兵器を保有しているかは不明だ。内戦が始まって以降、アサド政権は反政府勢力や市民に対し、何度も化学兵器を使用してきた。
反政府勢力にもテロ活動の「暗い過去」
反政府勢力がアサド政権の打倒に向けて電撃的な攻勢をかける中、アメリカの情報機関はシリアの化学兵器の保管施設への監視を強めていた。
ガザ地区を実効支配するハマスやレバノンのシーア派軍事組織ヒズボラ(いずれもイランを後ろ盾としている)がイスラエルとの戦闘を繰り広げる中で、アサド政権崩壊が中東地域のさらなる不安定化を招く恐れもある。
内戦では50万人以上が命を落とし、数百万人が家を追われたとみられる。
ロシア国営タス通信が伝えたところでは、アサドはシリアを脱出して翌8日にモスクワに到着。ロシア政府から政治亡命が認められた。
ロシアとイランは内戦中ずっとアサド政権を支援し、シリア政府軍の側に立って戦ってきた。
「間違いなく、アサドを引きずり下ろした反政府勢力の一部には、テロや人権侵害の暗い過去がある」と、ジョー・バイデン米大統領はホワイトハウスで述べた。
バイデンはまた、アサド政権崩壊で過激派組織「イスラム国」(IS)を初めとするテロ組織が新たな活動の足場を手にすることをアメリカは決して許さないと述べた。
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