米国のトランプ次期大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は7日の会談で、早期の戦闘終結の必要性で一致した。ウクライナ側はロシアとの停戦を自国に有利な形で実現するため、トランプ氏側への働きかけを強めている。ただ停戦の条件を巡ってはロシア側との隔たりは大きく、先行きは不透明だ。
ゼレンスキー氏は8日、X(ツイッター)に「私たちは米国と世界中がプーチン露大統領を止めることを信じる。彼が恐れるのは米国と世界の結束だ」と投稿。停戦協議に向けた米国の支援への期待をにじませる一方、「紙1枚と署名だけで平和は実現しない。保証のない停戦では、プーチン氏が過去にやったように(戦闘は)いつでも再開し得る」と、不利な条件での和平に懸念を表明した。
ゼレンスキー氏の懸念の背景には戦況の悪化がある。ゼレンスキー氏は8日、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以降、ウクライナ軍兵士4万3000人が死亡、37万人が負傷による手当てを受けたと発表。ロシア軍側でも兵士19万8000人が死亡、55万人以上が負傷し、今年9月以降、ロシア軍の兵力の損失はウクライナ軍の5~6倍に上ると推定した。
だがウクライナ軍は新規の徴兵が進まず、戦地には戦闘初期から従軍している兵士が多く、疲弊が深刻化している。一方のロシア軍は死傷者の増加をいとわない人海戦術で東部での進軍を加速させており、北朝鮮の援軍も得ている。またロシアは本格的な寒冷期を前に、ウクライナのエネルギー関連インフラを狙った攻撃も続けている。
ロシア側は戦況に応じた停戦協議を主張しており、ロシア軍優勢のままトランプ氏が両国に早期停戦を促せば、侵攻を受けたウクライナに不利な条件が提示される可能性が高まる。北大西洋条約機構(NATO)への早期加盟を含め、停戦後の安全保障の議論にも戦況が影響する可能性がある。
米政府は7日、戦況好転に向け、高機動ロケット砲システム(HIMARS)用の弾薬やドローン(無人機)などウクライナへの9億8800万ドル(約1482億円)相当の軍事支援を発表。バイデン政権は来年1月のトランプ新政権発足までに、できるだけ多くの支援を実施する考えだ。
ロシアとの停戦協議に向けウクライナ側はトランプ氏との関係構築を急いでいる。今回のパリでのマクロン仏大統領を交えた3者による会談前、ウクライナのイエルマク大統領府長官が渡米し、トランプ次期政権の関係者と会談するなど、米次期政権を見据えた外交活動が活発化している。【ブリュッセル宮川裕章、ワシントン松井聡】
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