韓国の国会は7日午後、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案の採決を始めた。与党議員のうち8人以上が賛成に回れば可決される情勢だったが、与党議員の大半が退場。禹元植(ウウォンシク)国会議長が採決終了宣言を遅らせ、投票するよう与党議員への呼びかけを続けている。与党議員のうち数人が呼びかけに応じて議場に戻り投票した。
尹氏が職務停止を免れるかどうか、ぎりぎりの攻防が続いている。
尹氏は7日午前の談話で国民に戒厳令について謝罪した際、自身の任期(2027年5月まで)を含めた政局の安定策を与党「国民の力」に一任すると述べ、任期の短縮を示唆した。与党内では事態の収拾策として憲法を改正して任期を短縮する案が出ており、尹氏はこれを念頭に置いたとみられる。その結果、当初は弾劾訴追案への賛成を示唆した国民の力の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は姿勢を反対へと一転させたと報じられた。
一方、これとは別に最高検察庁は戒厳令の宣布について内乱容疑での捜査を開始している。野党などが尹氏や戒厳軍を指揮した金龍顕(キム・ヨンヒョン)・前国防相らを告発していた。内乱罪は大統領の不逮捕特権の例外で、弾劾案が否決されたとしても捜査は継続する。
弾劾案が可決した場合、尹氏の大統領としての職務は停止し、韓悳洙(ハン・ドクス)首相が大統領職務代行を務める。憲法裁判所が180日以内に戒厳令が憲法や法律に違反したかどうかを判断する。違憲・違法だと認定すれば尹氏は罷免され、60日以内に大統領選となる。
否決の場合、通常国会は12月10日に終わるが、野党側は近いうちに臨時国会を開き、再度、弾劾案を発議する方針。世論調査会社「リアルメーター」が4日に18歳以上を対象に行った調査では、尹氏の弾劾に73・6%が賛成している。今後、尹氏の弾劾を求める集会などが拡大するかどうかも焦点となる。ソウルの国会前では7日夕、弾劾訴追案の可決を求める10万人規模のデモが行われた。
尹氏は3日夜、「非常戒厳」を宣布。最大野党「共に民主党」など野党6党は「憲法違反」だとして4日、弾劾案を国会に提出していた。弾劾案の可決には、国会の在籍議員の3分の2に当たる200人以上の賛成が必要。野党と無所属の議員は計192人で、与党から8人以上の賛成票が必要だ。
与党は5日の時点で弾劾案に反対する方針を決定。ところが6日になって「政治家の逮捕を命じた」など戒厳令に関する詳細が伝えられたことを受け、韓代表が「大統領の職務停止が必要だ」と述べ、賛成の意向を示唆した。与党議員2人が賛成すると表明し、他にも複数の議員が賛成を検討しているとの報道が出た。
すると尹氏が7日午前、国民に対する「談話」を発表し、国民に謝罪した。これを受け、賛成を表明した与党議員が撤回して反対すると述べるなど、流動的な情勢となっていた。【ソウル日下部元美】
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