国会で報道陣に囲まれる韓国の与党「国民の力」の韓東勲代表=ソウルで2024年12月6日、AP

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する弾劾訴追案は7日、国会で採決される。保守系の与党「国民の力」から8人以上が「造反」して賛成に回れば弾劾案は可決され、大統領は職務停止となる。与党の韓東勲(ハン・ドンフン)代表は6日、弾劾案に賛成すべきだとの意向を強く示唆。韓氏に近い与党議員らが賛成する可能性があり、可決の公算が大きくなっている。ただ、尹氏に近い議員らが今後、巻き返しを図る可能性も残っている。

 尹氏は3日夜、政権の方針に反対を繰り返す野党の言動を「内乱を企てる明白な反国家行為だ」と指弾し「非常戒厳」を宣布。だが国会が4日未明、解除を要求する決議案を可決し戒厳令は無効化した。野党は戒厳令を「違憲」だとして尹氏の弾劾案を国会に提出した。

 与党は5日の党会合で、弾劾案に反対する方針を決めていた。だが韓氏は6日午前、「大統領の職務停止が必要だ」と述べた。理由として、尹氏が戒厳令を宣布した際に主要政治家の逮捕を指示したとの情報を得たことを挙げた。

 韓氏は、尹氏が大統領職を続けた場合、「今回の非常戒厳のような極端な行動を再び行う可能性が高く、国民を危険に陥れる恐れが大きい」と述べた。

 韓氏は6日、尹氏と会談。大手紙「朝鮮日報」によると、韓氏が「3日の非常戒厳の後、長い時間がたった。(国民に自らの)立場を直接説明すべきだ」と求めたが、尹氏は「まだその時ではない」と述べるにとどめたという。

 仮に国民の力の議員108人のうち8人以上が弾劾案に賛成すれば可決され、尹氏は職務停止となる。党内で何人が韓氏に従うかがカギとなる。投票は無記名で行われる。

 韓国メディアは10月時点の与党内の勢力図として、尹氏に忠誠心を持つ議員が30~40人、韓氏に近い議員は20人と報じている。4日に国会が戒厳令の解除を要求する決議案を可決した際、賛成した与党議員は18人だった。

 韓氏に近い趙慶泰(チョ・ギョンテ)議員は6日、毎日新聞などに対し「私個人としては早く大統領の職務を停止させたほうが良い」と述べ、弾劾案に賛成する意向を示した。

 ただ与党内には、同じ保守系の朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)に対する弾劾決議案が2016年に可決された際、保守系与党・セヌリ党が弾劾案の採決を巡る対立などで分裂した経緯がある。与党議員の秘書は「大きなトラウマになっている」と話す。趙議員は、韓氏に近い議員の間でも「賛否は分かれているようだ」と述べた。

 韓国メディアによると、尹氏は6日、非公開の党会合で議員らに対し、大統領の職務停止が必要だとの自らの考えを改めて説明し「熟議してほしい」と求めた。

 尹氏に対する国民の不満は募っている。韓国の世論調査会社「韓国ギャラップ」が3~5日に実施した調査によると、尹氏の支持率は22年5月の就任後最低の16%となった。尹氏が3日夜に戒厳令を出して以降の4、5日の結果に限ると、支持率は13%だった。【ソウル日下部元美、福岡静哉】

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