フランス国民議会(下院)で内閣不信任決議案が可決されたことを受け、バルニエ内閣は5日、マクロン大統領に辞表を提出し受理された。マクロン氏は5日のテレビ演説で、自身の辞任を重ねて否定。新首相を近日中に指名する考えを明らかにした。
下院は4日、2025年の社会保障関連予算案を採決なしに強制採択したバルニエ内閣の不信任決議案を、野党の左派連合や極右「国民連合」(RN)などの賛成多数で可決した。
可決を受け、野党間ではマクロン氏の引責辞任を求める声が上がっている。これに対しマクロン氏は「意図的に予算案を廃案にし、内閣を倒した議員の責任を私は一切負わない」と野党を強い口調で批判。「混乱を生んだのは極左と極右が結託した反共和国戦線だ」と述べ、歴史的に極右の政権入りを阻止するため主義主張の異なる政党が協力してきた「共和国戦線」になぞらえ、左派連合と極右の共闘を非難した。
マクロン氏はそのうえで、「有権者が(22年大統領選で)民主的に私に託した任期は5年だ。私はそれを全うする」と述べ、27年の任期満了まで職務を継続する意向を強調した。
またマクロン氏は財政赤字の削減、緊縮予算の編成などを念頭に「課題は山積しており、(政党間の)分裂を克服し、行動しなければならない」との認識を示し、「そのために、私は近日中に首相を指名する」と明言した。新首相の指名と組閣までは、バルニエ内閣に暫定的に業務の継続を委ねる考えも示した。
6~7月の下院総選挙では左派連合、中道連合、RNのいずれも過半数に届かず、不安定な状態が続いている。このため新首相は、左派、極右との人脈や交渉能力のある中道政党を中心とした閣僚経験者などが候補になるとみられる。
仏メディアでは首相候補として、中道右派「共和党」出身のルコルニュ国防相やベルトラン元労働相、バロワン元財務相、中道「民主運動」のバイル氏のほか、社会党出身で穏健派のカズヌーブ元首相らの名が取り沙汰されている。【ブリュッセル宮川裕章】
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