毎年、日本人観光客が多く訪れている韓国。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「非常戒厳」宣言をめぐる混乱はどう影響するのでしょうか?

韓国 弾劾訴追案 7日に採決か どちらでも難しい結果に?

上村彩子キャスター:
今回の「非常戒厳」を宣言した尹大統領を巡り、4日、野党は弾劾訴追案を提出しました。7日に採決かとみられています。

韓国の国会の議席数は300人で、その3分の2に当たる200人以上の賛成で可決となりますが、与党は反対の方針です。最大野党が170人、その他を合わせても192人なので、与党の中で8人以上が賛成に回ると、可決になるとみられています。

採決の結果でどうなるのか、日韓関係に詳しい防衛省防衛研究所の浅見明咲さんにお聞きしました。

▼可決されなかった場合
尹大統領が続投になり市民から不満が出て、デモや暴動が起こる可能性も

▼可決された場合
可決後、憲法裁判所の審理や大統領選挙などで5か月くらい韓国の政治が止まる可能性も

井上貴博キャスター:
今回、大統領の暴挙を韓国国民が阻止できたことはとてもよかったなと感じました。その一方、強権的な権力者が暴走したときに、こんなにも簡単に民主主義が脅かされてしまうのかということを同時に感じました。いずれにしてもここから韓国政治は混迷するのでしょうか。

防衛省 防衛研究所 浅見明咲さん:
民衆が勝ち取ってきた民主主義が韓国の今の民主主義におけるすごく大きな根幹になっているので、それが揺らぎかけたというところに関して韓国国内、アメリカを初め世界各国が注視をしているところだと思います。

ホラン千秋キャスター:
可決されなかった場合と可決された場合の見通しがありますが、どちらの方が可能性として高いと見られていますか。

浅見明咲さん:
可能性としては可決されない可能性の方が高いのではないかと見ています。今、野党が可決するまでの200人に足りていません。あと8人、与党側から票を引っ張ってこなければいけないという状況になっています。その8票を崩せるのかというところが一つのポイントになってくるかと思います。

韓東勲代表が与党で結束して反対に投じる方針を示しているので、そこを崩していくことは短期間では難しいと見ています。

閣僚も辞意は表明しているのですが、受理されるかどうかは別の話になってきます。混乱もありますが、国会として、与党はそのような対応をしていくことになると思います。

年末年始の人気旅行先 ソウル 海外旅行予約者数で1位

上村キャスター:
では今後、どのような影響があるのでしょうか?

まずは韓国への旅行についてです。今回の年末年始は最大9連休なので、海外旅行に行かれる方も多いかもしれません。

HISのホームページによると12月27日〜1月5日の出発日の「海外旅行予約者数ランキング」1位はソウルになっています。5日の空の便は日本航空、全日空ともに通常通り運行しており、外務省のホームページには韓国への渡航について危険情報は出ていません。

韓国の人気スポットは今どうなっている? カフェや遊園地は?

上村キャスター:
では、韓国内はどのようになっているのでしょうか?人気スポットの聖水洞“カフェ通り”、ソウルのロッテワールドも通常通り営業しています。
さらに聖水洞のカフェスタッフの方によると「とくに混乱もなく、周辺のお店もいつもと変わりなく営業しています」ということです。

そして、5日からプライベートで韓国に旅行しているNスタスタッフも「ギリギリまで行くか迷いましたが、旅行に行くことを決めました。到着して街は通常通りで安心しました」ということです。

スポーツ心理学者(博士)田中ウルヴェ京さん:
国が変化しているときに、ショッピングエリアなどの身近な場所がどうなっているのかは現場の声を知ることで重要です。

ただ、個人で感じる影響と、俯瞰的に見て日本という国での影響を考えたとき、身近な国の政権の変化は国にどのような影響を与えるのか、長期的に知っていきたいと思います。

浅見明咲さん:
個人で感じる変化はあまりないということですが、デモが起きる可能性は考えられますし、そういった場所に近づいて巻き込まれることは非常に危険です。現地や大使館からの情報などを得た上で、個人で判断して楽しんでいただければと思います。

ホランキャスター:
大使館以外に一般の方が旅行する上で必要な情報を得る場合、どんなところを調べるといいのでしょうか。

浅見明咲さん:
基本的には「どこが安全」「どこが危険」という情報は、どこにいてもわかりません。海外である以上、日本と勝手が違うということを常に意識する必要があります。

ソースがあるニュースなどからしっかりと情報を取り、自分たちで判断して対策をしつつ楽しんでいただければと思います。

ホランキャスター:
現地に行って状況が変わることもあるでしょうから、いろいろなことを考えながら行った方がいいかもしれないですね。

日韓関係への影響は大きい? 日米関係にも影響か

上村キャスター:
そして気になる日韓関係についても見ていきましょう。
岸田前総理と尹錫悦大統領は10回以上のシャトル外交を繰り返すなど良好な日韓関係を築いてきましたが、今後の日韓関係について、5日の衆議院予算委員会で石破総理からは「安全保障の状況が根底から変わるかもしれない」という発言がありました。

さらに、防衛省 防衛研究所の浅見明咲さんは「日韓の連携が上手くいかなくなることで日米の外交関係にも影響が出る可能性も」と仰っています。

井上キャスター:
2国間だけでなく日米韓、あとは中国、ロシア、北朝鮮…この辺りはどう見ているのでしょうか。

浅見明咲さん:
トランプ氏の大統領再選が決まり、1月20日に就任します。“トランプ2.0”に向けて日韓が連携していく大切さが非常に注目されていた時期でもありました。

来年、日韓は国交正常化60周年を迎える年でもあり、日韓の協力が非常に重要視されていた中でこのような状況になってしまい、復活していたシャトル外交がどうなるのかも一つの懸念点かと思います。

日米韓の協力に関して、すぐに悪化することは考えづらいですが、足並みを揃えられなくなることで、長期的に中国、ロシア、北朝鮮に対する対応に少しずつ影響が出てくることは考えられると思います。

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<プロフィール>
浅見明咲さん
防衛省 防衛研究所
朝鮮地域の安全保障が専門
ソウル国立大学卒 日韓関係に詳しい

田中ウルヴェ 京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰

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