戒厳令を宣言する韓国の尹錫悦大統領=ソウルで2024年12月3日、大統領府提供・ロイター

 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領によって3日夜に出された突然の非常戒厳令。韓国国会の決議を受け、4日未明には尹氏が解除を発表したものの、韓国と結び付きの強い九州では隣国の政治を巡る混乱に動揺と不安が広がった。

 「まさか戒厳令が出るなんて……」。福岡市博多区で韓国雑貨店を営む韓国出身の女性(54)は4日、店内のテレビに映された戒厳令関連の情報を伝える韓国のニュース番組を、不安そうな顔で見つめた。取引先と連絡を取り戒厳令の影響がないことは確認したが、韓国では食料品が買い占められた様子などが報じられ、心配もしている。

 九州の2023年の外国人入国者数は約319万人で、6割に当たる約193万人が韓国人だ。「アジアの玄関口」の福岡市は、福岡空港や博多港が韓国との定期便で結ばれ、観光や物流などの関わりは大きい。

 ただ、航空各社によると、4日に福岡空港を発着する韓国便は通常通り運航し、大きな混乱はなかった。韓国旅行を扱う旅行大手「エイチ・アイ・エス」(HIS)の広報担当者も「韓国旅行は通常通り催行しており、目立ったキャンセルの動きもない」と話す。

 一方、韓国政治の混乱が長引くことも予想され、関係者には動揺が広がる。

 福岡市中央区で事業を営む韓国出身の女性(59)は「日本に住む知り合いの韓国人は一晩眠れなかったそうだ。こんなことは普通じゃない。納得できない」と不満をあらわにする。

 福岡市に住む韓国・釜山出身の会社員、明世潤(ミョンセユン)さん(31)もニュースを知って驚いた。「支持率が低迷しているとはいえ、まさかこんなことをするとは……。戒厳令に至った原因を調べ、市民の声を聞いて平和に政権移行をしてほしい」と話した。

 韓国で記者を長年務め、現在は九州の大学で教壇に立つ専門家は「危ぶまれた自分自身の権力を強化する手段として使った。完全に内乱だ」と指弾。「権力維持を目的とした愚かな行動が、民主主義をより強化・監視していくきっかけになった。尹氏は自ら辞めるような人ではなく、別の手段でクーデターを起こす可能性もあるので、早い段階で権限を停止させる手続きを進める必要がある」と指摘した。【山口響、森永亨、日向米華】

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