魚や肉の値上がりで日本人のタンパク質摂取量は戦後初期レベルにまで低下 Hakase.../iStock.
<この10年でタンパク質の供給源となる魚・肉・卵の価格は10%~90%も上昇>
日々、スーパーで買い物をしていて物価高を感じさせられる。ここ最近の値上がりが最も顕著なのは米だ。先日、無洗米5キロを3600円で購入した。春先の頃には1750円だったので、倍以上に価格が上がっている。酷暑で収穫量が減っているためとは聞いているが、主食であるだけにきつい。そう感じている人は多いはずだ。
総務省の『家計調査』に、米の購入費用ならびに購入量の平均値が出ている。今年9月の2人以上世帯のデータを見ると、購入に支出した費用は2907円、購入量は6.35キロ。よって5キロあたりの値段は、2365円ということになる。「3000円は超えているのでは」という気もするが、地域差もあるので全国値だとこうなのかもしれない。
この指標の推移をたどってみると、最近の米価の高騰が露わになる<図1>。月単位のデータで凹凸がやや激しいので、当該月と前後の月の平均をとった移動平均法で推移を均している。
今年になってからの上昇が顕著だ。うなぎ上りと言っていい。この10年ほどの間ではなかったことで、天候不良の影響に加え、米の生産量を抑制する「減反政策」が行き過ぎたのではないか、という政治の失敗も指摘されている。
米だけではなく、他の食品も値上がりしている。日本人のタンパク質の摂取量が戦後初期の頃と同レベルにまで低下しているそうだが、魚や肉が高くなっているためでもあるだろう。タンパク質の主な供給源について、100グラムあたりの値段を計算すると<表1>のようになる。1~9月の平均値が、10年間でどう変わったかを見たものだ。
9つの食材のデータだが、どれも値上がりしている。サケは1.5倍、サンマに至ってはほぼ倍増だ。あと10年もしたら,魚・肉・卵は高級品の部類になっているかもしれない。
困窮家庭にすれば現にそうなっているようで、9月22日の毎日新聞に「肉や卵もぜいたく品、不安抱えるシングルマザー」という記事が出ている。タンパク質は血肉、すなわち「体」をつくる重要な栄養素で、魚・肉・卵が口に入らないとなると、子どもの健全な育ちが脅かされる。
物価が上がるのは、原材料費や物流費の高騰にもよるので、ある程度仕方のない面もある。しかし、可処分所得が増えないのに、物価だけ上がるのはキツい。そこで政府の出番となるのだが、現金や食券の配布といった「一時しのぎ」の策ではなく、奢侈品を除く食品については消費税を軽減ないしは撤廃することが求められる。
過去最高を更新し続けている政府の税収を見ると、増えているのは消費税だけで、法人税や所得税は減っている。国民の「食」を保障するうえで、政府ができることはあるだろう。
<資料:総務省『家計調査』>
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