米民主党全国大会であいさつを交わすバイデン大統領(左)と次男ハンター氏=シカゴで2024年8月19日、ロイター

 バイデン米大統領(民主党)が次男ハンター氏に恩赦を与えたことに対して、米国内で批判が高まっている。バイデン氏やホワイトハウスが「恩赦は与えない」と繰り返し表明してきた経緯があり、矛盾するからだ。個人的な利益を優先させた恩赦への非難は、身内の民主党からも出ている。

 「恩赦はないとしてきた過去の発言は、米国民から『うそ』とみなされるのではないか」。ホワイトハウスのジャンピエール大統領報道官は2日、アフリカのアンゴラへ向かう大統領専用機の中で、記者団から追及された。

 FOXニュースによると、ハンター氏への恩赦の否定は、バイデン氏がテレビインタビューなどで複数回、ジャンピエール氏も記者会見などで2023年7月以降で計6回に及ぶ。

 ジャンピエール氏は記者団の質問に正面から答えず、「大統領が信じていることの一つは、米国民に対して常に誠実であるということだ」と述べ、バイデン氏について「(恩赦を)悩んでいた。簡単な決断ではなかった」などと答えた。

 今回の恩赦の発表は米東部時間の1日、日曜の夜にあった。ホワイトハウスは声明文の発表だけで説明をせず、直後に大統領専用機に乗り込んだバイデン氏は記者団の質問に答えなかった。強い批判が出ることを想定した対応だった可能性がある。

 ジャンピエール氏は専用機内で、決断の経緯など重ねて質問を受けたが、声明文の内容を繰り返すにとどまった。一方で、バイデン氏がさらなる恩赦を行う可能性を示唆した。

 恩赦自体への非難は共和党を中心に広がっている。下院監視・説明責任委員会のコマー委員長は声明で「バイデン大統領と家族が説明責任の回避のために手を尽くしているのは残念だ」と批判。バンクス下院議員はX(ツイッター)に、「法の上に立つ者はいない」というバイデン氏の過去の投稿を引用する形で、「ハンター・バイデン(氏)は法より上」と投稿して皮肉った。トランプ次期大統領も先に「誤りだ!」と自身のソーシャルメディアに投稿している。

 民主党内からも批判的な意見が出ている。党のイメージダウンに加え、トランプ氏の大統領就任後の行動を後押しすることにつながる懸念があるからだ。

 ベネット上院議員はXに「バイデン大統領の決定は個人的な利益を優先させ、司法制度は公平で平等だという米国人の信頼を損なわせるものだ」と投稿。スタントン下院議員も「今回の件は間違っている」などとXに書き込んだ。【ワシントン西田進一郎】

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