日中共同世論調査の結果について言論NPOの工藤泰志代表に聞いた。【聞き手・畠山哲郎】
今回、中国側の対日意識は全面的に悪化したが、大きなショックを受けたのは、この20年間の調査で一度も6割台が崩れなかった、日中関係を「重要」と思う人が、今回初めて約2割まで落ち込んだことだ。
中国の調査手法は昨年までと全く変わらず、ここまでの意識の悪化は世論構造の修正を意味している。調査を分析すると、日本への渡航歴がある人とそうでない人との意識は断絶し、渡航経験のない人は年代を問わず日本に対する認識が総崩れしている。
中国は米国の大統領選を意識し、米中対立の原因を「米国」だとする人が昨年から倍増した。その米国と日本が連携し、経済安全保障を強め、独自に軍事力を強めているとみている中国国民に「日本が重要ではない」という人が膨らんでいる。SNS(ネット交流サービス)上でこうしたニュースが繰り返され、世論に影響を与えた可能性は高い。
ただ、日中平和友好条約を機能させるため状況を改善しようという声は中国に多く、日中が決裂に向かっているわけではない。ロシアのウクライナ侵略に対する考え方が日中で大差がないことも調査で判明した。世界が分断に進む中、日中が連携してどのような外交を展開していくのか、日中関係の在り方が問われているのではないか。
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