奪還したアレッポの古城前でポーズをとる反政府勢力の戦闘員たち(11月30日) Anas Alkharboutli/dpa via Reuters Connect

<突如、大規模攻勢に転じたシリアの反政府勢力が、第二の都市アレッポを制圧。撤退する政府軍から奪取したとみられるロシアの最新型地対空ミサイルの画像がネット上で拡散されている>

内戦が膠着していたシリアで11月27日、反体制派武装勢力が8年ぶりに突如、同国北部に大規模攻撃を開始。政府側に奪われていたシリア第二の都市アレッポを制圧した。

【画像】ロシアの防空システム「パーンツィリ」と誇らしげな反政府勢力

ソーシャルメディアに拡散されている画像によると、反政府勢力はその時にロシアの最新型地対空ミサイル「パーンツィリ」も鹵獲したようだ。

画像からすると、アレッポでは、多連装ロケットランチャーやパーンツィリシステムといったロシアの兵器や装備が、反政府勢力の手に渡ったように見える。

本誌はこの情報を独自に確認することはできなかったが、アメリカを拠点とするシンクタンク戦争研究所(ISW)は11月30日、シリア軍戦闘員が「慌てて撤退する中で放棄した貴重な軍装備品」を、反政府勢力が「確保したようだ」と発表した。

11月27日、反政府勢力はアレッポとその南にあるハマ県に奇襲を仕掛けたが、シリア軍およびロシアの盟友であるバッシャール・アサド大統領を支持する勢力からの抵抗にはほとんど遭遇しなかったようだ。

反政府勢力は、2016年にアサド政権によって追い出されたアレッポとハマを取り返すことに成功した。

反政府勢力は複数の武装勢力の集合体で、アルカイダ関連組織のシャーム解放機構が中心的な役割を果たしている。

対立は近年、比較的鎮静化していたが、シリア内戦が始まった2011年から最初の10年間では30万人以上の市民が死亡したと国連は2022年に推定している。

ロシアはアサド政権を支援しており、2015年には空爆でアサドを支えた。

ワシントンのシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は、ロシアの参戦について「シリアとイランが支援する地上部隊に決定的な空軍力を提供し」、アサドのシリア領土の支配を広げたと評している。

だが今、ロシアはウクライナでの熾烈な戦争に深く関与している。もう一方の後ろ盾であるイランはイスラエルと一触即発の状態だ。レバノンのシーア派勢力でイランの代理勢力であるヒズボラも、イスラエルの攻撃で弱体化。そうした隙を狙った攻撃とみられる。

アサド政権に忠誠を誓うシリア軍は11月30日、反政府勢力がアレッポとアレッポ南西のイドリブの複数の地点で「大規模な攻撃を開始した」と発表し、親政権派の兵士が「数十人」殺害されたと伝えた。

シリア軍は防衛線を強化するために撤退した。アサドの支配に対するここ数年で最も重要な挑戦に対して「反撃の準備をする」ためだ、と軍は述べている。

イギリスを拠点とする監視組織シリア人権監視団(SOHR)は11月30日に、イスラム過激派組織シリア征服戦線などの反政府勢力が、イドリブとアレッポの農村地帯にある20の「村、町、拠点」を制圧したと発表した。

戦争研究所も11月30日、攻撃開始から3日以内に反政府勢力がアレッポを掌握し、「ハマ市に向かって前進した」と発表した。反政府勢力はアレッポの空港や主要なランドマークを支配しているとみられている。

シリア軍は12月1日、ハマ北部の田園地帯に増援部隊を投入したと発表し、「シリアとロシアの合同軍事航空隊は、反政府勢力の弾薬庫や武器庫、司令部、陣地に対する正確な攻撃を強化している」と述べた。

シリア人権監視団は同日、イドリブに対するロシアの空爆で4人の市民が死亡し、数十人が負傷したと発表した。27日以来、合計372人の民間人と軍人が殺害されたという。

また、1日にはアレッポ北部周辺で武力衝突が激化し、同市周辺の田園地帯で反政府勢力を攻撃するためにロシア軍機が数機飛来したことも伝えた。

アサドは30日、シリアは「安定と領土保全を守る」と述べた。

【画像】ロシアの防空システム「パーンツィリ」と誇らしげな反政府勢力

Syrian rebels have captured a Russian-made Pantsir air defense system in Aleppo.

It will be an interesting if this Pantsir knocks down a Russian plane. pic.twitter.com/43OLRGXbPD

— Open Source Intel (@Osint613) December 1, 2024

コメントには、「これでロシアの軍用機を撃墜したら面白いことになるな」とある

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