極超音速ミサイル(滑空タイプ)の迎撃イメージ

 日米両政府は、極超音速ミサイルに対応する新型迎撃ミサイルの共同開発費が総額30億ドル(約4710億円)超に上るとの推計をまとめた。米国防総省ミサイル防衛局が毎日新聞に明らかにした。日本側は10億ドル(約1570億円)を拠出し、迎撃ミサイルの推進装置などの開発を担い、2030年代半ばの完成を目指す。中国やロシア、北朝鮮が極超音速ミサイルの開発を進展させており、迎撃態勢の強化が急務となっている。

 迎撃を想定しているのは、ロケットで一定の高度まで打ち上げた後に弾頭(滑空体)を分離し、上昇と下降を繰り返しながら滑空させるタイプの極超音速ミサイル。ミサイルが落ちてくる最終段階では既存の迎撃システムでも一定の対応は可能とみられるが、日米両政府はその前の段階の滑空中でも迎撃できるようにするため、昨年8月の日米首脳会談で新型の迎撃ミサイルを共同開発することで合意。日本政府は24年度予算で当面の開発費として757億円を計上していた。

日本と米国が共同開発した弾道ミサイル対応の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」の発射試験=2022年11月(米国防総省提供)

 極超音速ミサイルは音速の5倍(マッハ5、時速約6000キロ)以上で飛行するため、既存のミサイル防衛システムでは捕捉や迎撃が難しい。中国やロシアは、米国のミサイル防衛システムを突破する新兵器として開発を進めており、滑空タイプは既に配備されている。北朝鮮も極超音速ミサイルの発射実験に成功したと主張している。

 米国は探知・追尾能力を向上させるため、宇宙の低軌道に数百基の衛星群を配置し、広域を常時監視する計画を進めている。既に衛星の一部を試験的に打ち上げ、宇宙からの目標の探知、追尾、地上の防空システムへの情報伝達などの機能を検証している。新型の迎撃ミサイルは米海軍や海上自衛隊のイージス艦に搭載し、衛星群が探知した情報を基に標的を撃墜することを目指している。

 日米は、弾道ミサイル対応の迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を共同開発した実績がある。極超音速ミサイル対応の迎撃ミサイルについても、共同で開発促進や費用分担を図り、衛星群の配置でも協力する方針だ。

 極超音速ミサイルには、滑空タイプとは別に高性能のスクラムジェットエンジンで推進力を得る巡航タイプもある。滑空タイプよりも技術的な難易度が高いが、各国が開発競争を進めている。新たな攻撃ミサイルが実用化されるたびに迎撃ミサイルの開発が必要になるという連鎖が続いており、将来的には巡航タイプの迎撃も防衛上の課題になりそうだ。【ワシントン秋山信一】

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