11月の米大統領選で勝敗を左右する大きな要因となったのはヒスパニック(中南米系)の動向だった。CNNの出口調査によると共和党のトランプ前大統領に対するヒスパニックの支持率は2020年の大統領選に比べ14ポイントも伸び、46%に上った。
実は、今から2年半以上前、共和党がヒスパニックら少数派の有権者を取り込み、政治が大きく変わるだろうと語った人物がいた。トランプ氏の元側近で右派ナショナリストのスティーブ・バノン氏だ。
バノン氏は22年の保守系コラムニストとのインタビューで、少数派を取り込んだ「米国第一主義」を「インクルーシブナショナリズム(包摂的なナショナリズム)」と呼んだ。「ナショナリズムに人種、民族、宗教、性的指向は関係ない。重要なのは米国市民かどうかだけだ。これは未来の政治的な潮流だ」。さらにバノン氏は共和党が少数派を取り込み、優位になる時代が長く続くとも示唆する。
少数派と米政治の関係に詳しい米エール大のダニエル・マルティネス・ホーサン教授(政治学)は新しいナショナリズムについて「人種や民族に基づくものではなく、新たな移民を制限し、社会問題に対処する公的な取り組みに批判的という意味でのナショナリズムだ。それが既に完成したとまでは言えないが、その方向には向かっている」と指摘する。【ワシントン松井聡】
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