アメリカ大統領の就任前に、早くも“関税戦争”を仕掛けてきたトランプ氏。その矛先が向かったのは、メキシコやカナダ、それに中国でした。その影響とは?手作り解説でお伝えします。
トランプ氏こだわりの「関税」とは?
「辞書の中で最も美しい言葉は関税だ」というトランプ次期大統領。そこまでこだわる「関税」とはどんなものなのでしょうか。関税は「輸入品に課せられる税金」で、例えば、アメリカが日本から乗用車を輸入する際には2.5%の関税がかかり、400万円の車だと10万円が上乗せされて販売されます。こうした関税をかける主な目的は「国内産業の保護」にあります。関税をかけることで輸入車の価格を高くし、国産車を売りやすくするのです。車を輸出する側の国にとっては、デメリットとなります。
歴史的に関税は、古代都市国家での手数料から始まったとされ、古代ローマではある時期、行政にかかる費用を、多くを関税と奴隷税で賄い、税金を負担していたのは、ローマ市民でなく、主に外国人だったとされています。結果的に、自国民は優遇されていたことが伺えます。
「高い関税」が戦争の一因に…
こうした自国ファーストの考え方が行き過ぎたのが、戦前のブロック経済です。1929年の世界恐慌による経済危機を受け、アメリカ、イギリス、フランスなどは植民地や同じ通貨を使う友好国などで「ブロック」をつくり、高い関税をかけてブロック外からの輸入品を排除しました。日本やドイツもブロックを作って対立が激化し、第二次大戦の一因となったとされます。
戦争の反省から、関税減らす試み
こうした反省から戦後、国際社会は関税を減らす試みを進めようと、GATTやWTOといった枠組みが作られました。EUの域内では関税がなく、日本が加盟するTPPも多国間で関税を減らし貿易を自由化する協定です。自由貿易協定=FTAも世界各国で進められ、今回、トランプ氏の標的となったカナダ、メキシコは、アメリカと3カ国のFTAを結んでいました。トランプ氏は前回の政権でも、このFTAの見直しを迫りましたが、結局、「原則関税ゼロ」の協定は残していたんです。ところが、こうした流れに逆行する形で、今回、トランプ氏はメキシコとカナダに対して25%の関税を突きつけました。
もし、関税引き上げなら、日本企業にも…
問題は、この2カ国に止まりません。例えばメキシコには、日本の自動車メーカーなども工場を置き、アメリカ向けの輸出拠点にしていました。メキシコから輸出すれば、関税がかからないからこそ利益が見込めるのですが、実際に25%もの関税をかけられれば、売るのが難しく影響は小さくないとみられます。
麻薬問題まで持ち出して、関税の復活を迫っているトランプ氏。日本に対する直接の新たな関税は具体的に明らかにしてはいませんが、いつ“トランプ関税”の矛先が向かないとも限りません。
(「サンデーモーニング」2024年12月1日放送)
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