2011年から内戦が続くシリアで、反体制派が29日、北部の主要都市アレッポに進攻し、政府軍と衝突した。AP通信などが伝えた。アレッポでの大規模な戦闘は、16年にアサド政権側がこの都市を反体制派から奪還して以降では初めて。北西部イドリブ県など一部地域に追い詰められていた反体制派が、数年ぶりに大がかりな攻勢に出た形だ。
中東では、昨年10月に始まったパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘を皮切りに不安定さが増している。シリア内戦が再び激化すると、混迷はさらに深まる恐れがある。
シリア内戦は11年、中東の民主化要求運動「アラブの春」でアサド政権が反政府デモを弾圧したのを機に始まった。反体制派は支配地域を広げたが、その後にロシアやイランの支援を受けるアサド政権が攻勢に転じ、ほぼ全土で軍事的優位を確立した。
ロイター通信などによると、今回の攻撃は国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)が主導している。27日に攻撃を始め、アレッポ周辺で多くの集落を制圧。29日にはアレッポ市内にも進攻した。政府軍は、アレッポと周辺の幹線道路や空港を封鎖した。反体制派が進攻した市内の主要地域では、政府軍に撤退命令が出されたという。
在英民間団体「シリア人権観測所」は、27日以降の戦闘で民間人24人を含む約280人が死亡したとしている。アレッポ県内ではイランの精鋭軍事組織・革命防衛隊の幹部も殺害されたという。
ロシアが近くアサド政権への軍事支援を強化するとも報じられ、現地での戦闘が激しさを増す可能性が高い。
シリア内戦では、隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラもアサド政権を支援してきた。だが、ヒズボラは今年9月以降、対立するイスラエル軍の猛攻で弱体化。シリア国内でも、イスラエル軍がヒズボラ戦闘員らを狙ったとみられる空爆が相次いでいる。HTSはこうした隙(すき)に乗じて攻勢に出た可能性がある。【カイロ金子淳】
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