11月27日、イスラエルとレバノンの親イラン武装組織ヒズボラが1年超に及んだ戦闘の停止で合意したのを受け、イスラエルとイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザで繰り広げている戦闘の行方に対する注目が再び高まっている。写真は同日、イスラエルの攻撃で破壊された、避難所となっているガザの学校施設で撮影(2024年 ロイター/Dawoud Abu Alkas)

イスラエルとレバノンの親イラン武装組織ヒズボラが1年超に及んだ戦闘の停止で合意したのを受け、イスラエルとイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザで繰り広げている戦闘の行方に対する注目が再び高まっている。しかし、戦闘が早期に終結することは望み薄の公算が大きい。

イスラエルとヒズボラの停戦が27日に発効し、ここ数カ月間で急激にエスカレートしていた攻撃に終止符が打たれた。


 

バイデン米大統領はイスラエルとヒズボラの停戦合意を発表した際、ガザでの停戦に向けて働きかけをするとしてイスラエルとハマスに応じるよう促した。

しかし、イスラエルの指導者らがハマスに対して手を緩めようとする兆候は見られない。

イスラエルの安全保障問題関係閣僚会議に出席する国内治安機関シャバク(シンベト)元長官のディヒテル農相は今週、外国の報道陣に「ガザがイスラエルの脅威となることは二度とないだろう。私たちはそこで決定的な勝利を収める。レバノンとは違う」と言い切った。さらに「私たちは(ガザでの掃討の)終わりの始まりにいるのだろうか。明らかに違う。取り組むべきことが依然として山積している」と強調した。

イスラエルのネタニヤフ首相は、ハマスが昨年10月のイスラエル攻撃で人質に取った101人のイスラエル人が人質として拘束されたままだと訴え、全員を帰還させてハマスを撲滅すると誓った。

イスラエルとハマスの交渉は長い間停滞しており、互いに行き詰まりの原因は相手にあると非難している。ハマス幹部のサミ・アブ・ズーリ氏は27日にロイターに対し、イスラエルが頑迷だと非難して「今回の(イスラエルとヒズボラの)合意が、ガザの人々に対する虐殺戦争を終わらせる合意に達する道が切り拓かれることを望んでいる」と語った。

一方、イスラエルと米国はハマスが誠実な交渉に応じていないと非難している。

連日の攻撃

ガザでの戦闘は、大方の予想をはるかに超えて長期化している。約1年2カ月間に及ぶ戦闘でガザの大部分は廃墟と化し、約4万4000人のパレスチナ人が犠牲となった。イスラエル軍は依然としてハマスの一掃を目指し、ガザの広範囲を連日攻撃している。

イスラエルとヒズボラの停戦合意のニュースは、見捨てられて忘れ去られたと感じているガザ住民の多くに暗い気持ちで受け止められた。


 

ガザ中央部のテントで家族とともに避難生活を送るアヤさん(30)は「ある場所に雨が降れば、別の場所にいる人々にとって良いことが起こる前兆だという。レバノンの停戦合意の後、戦争を終わらせるための努力がガザに集中的に振り向けられることを願っている」と語った。

イスラエルとハマスの仲介で中心的な役割を果たしているエジプトでも、かすかな楽観論が浮上した。エジプト安全保障筋の2人によると、イスラエルはレバノンでの停戦が維持された場合、ガザでの停戦交渉を再開させるとエジプトに通告した。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はバイデン氏が特使をトルコ、カタール、エジプトなどの中東諸国と交渉させることで、ガザでの停戦に向けた働きかけを再開させると明言した。

しかし、米大統領は来年1月にトランプ氏に交代する。トランプ氏は戦闘終結に向けて取り組むとしながらも、どのように実現するかの計画を何も示していない。パレスチナ人たちはトランプ氏がこれまでに極めてイスラエル寄りの姿勢を示してきたことから楽観視していない。

戦闘の切り離し

イスラエルと米国の両政府高官は、ハマスと同じくイランの支援を受けるヒズボラがガザ紛争から切り離されたことを評価した。

しかし、テルアビブ大のシンクタンク、国家安全保障研究所(INSS)のオーファー・シエラ上級研究員はロイターに対して、切り離しが結果としてガザでの戦闘終結を難しくするかもしれないと指摘。「ガザを巡ってイスラエルに現実的な圧力がかかることがなくなった」と語り、ハマスと和平協定を結ぶことはネタニヤフ氏の目的達成にはならないかもしれないと付け加えた。


 

ネタニヤフ政権は戦闘に前向きなタカ派で占められており、その中にはヒズボラとの停戦を非難し、ガザの占領を望んでいるメンバーもいるため「ガザでの戦争が終結すれば連立政権が脅かされるため、戦争継続はネタニヤフ氏にとって政治利益があると思う」との見解を示した。

人質となっているイスラエル人の家族も、ネタニヤフ氏がヒズボラとの停戦に合意したことに怒りをあらわにした。

ハマスは約1200人の犠牲者を出した23年10月のイスラエル南部への攻撃で拘束した人質の残りと引き換えに、イスラエルに捕らわれているパレスチナ人の解放を求めている。イスラエル軍のガザからの撤退も要求する一方、武装解除や解散の要求も真っ向から拒否している。

双方の立場の違いが鮮明な中で、イスラエルのディヒテル農相はハマスがガザで将来的に何らかの役割を果たすことは考えられないとし、イスラエル軍がガザから近いうちに撤退することもあり得ないと断言。 「われわれはガザに長く留まることになるだろう」と予想した。



[ロイター]


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