労働者を追悼し献花する新潟県佐渡市の渡辺竜五市長(右)ら=同市のあいかわ開発総合センターで2024年11月24日、中津川甫撮影

 韓国政府が新潟県佐渡市で開かれた世界文化遺産「佐渡島の金山」の追悼式への参加を見送ったことを巡り、韓国の趙兌烈(チョテヨル)外相は28日、国会の委員会で、追悼式に出席した生稲晃子外務政務官が過去に靖国神社を参拝したとするメディアの誤報が不参加決定の「考慮事項ではあったが、報道がなくても不参加を決めたはずだ」と述べた。

 韓国政府は不参加決定は追悼の辞の内容などが世界遺産登録に賛成するに当たって日本と合意していた水準に満たないためだったとしている。趙氏は委員会で、「合意精神を傷つける追悼式になってはならないと厳しい協議を行ったが、両国間の隔たりは縮まらなかった」と説明した。

 協議で韓国側の意見を反映できず欠席に至ったことに、「外相として責任を痛感している」と述べた。来年以降の追悼式については、日本に対し「真摯(しんし)な追悼式を開催できるよう促していく」とした。

 佐渡金山の登録を巡っては、日韓両政府が7月に、朝鮮半島出身労働者に関する歴史を含む「全体の歴史」を現地の展示に反映することで大筋合意していた。だが、展示で「強制労働」の言葉は使わないことなどに対し、韓国国内からは批判の声が出ていた。追悼式での生稲氏の追悼文にもそうした言葉がないとして、韓国メディアは「追悼の意が感じられない」などと非難している。

 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権は支持率が20%前後と低水準で、求心力は落ちている。韓国政府が今回、追悼式を欠席し、日本に対して強硬姿勢を取ったことについては、政界や世論から評価する声が出ており、軌道修正は困難だとみられる。【ソウル日下部元美】

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